個人合意に達したと伝えられるリバプールとチアゴ・アルカンタラ。残るはバイエルンとのクラブ間合意だが、移籍金に関しては両者にはまだまだ開きがあるようだ。バイエルン・ミュンヘンは契約満了が来年に迫ったチアゴの移籍金について一度値引きをしており、これ以上の値引きは望めない。
アダム・ララーナの退団に伴う中盤補強の優先度は依然として高い中、イタリアから面白いニュースが届いた。昨年夏にアーセナルとの契約満了でユベントスにフリー移籍したアーロン・ラムジーの戦力外通達。解任されたマウリツィオ・サッリ監督のもとでも、先発は11試合と出番に恵まれなかったラムジーだったが、新監督のアンドレア・ピルロは主力として捉えておらず、移籍を容認する方針だそうだ。
市場価値は2800万ユーロ(約36.4億円)と考えられており、チアゴの要求額と遜色ない。ユベントスの要求額がいまだに不明だが、29歳という年齢を考えると、法外な移籍金を要求しないはず。ジョルジニオ・ワイナルドゥムの去就も進展がない中で、的確な補強ターゲットになり得るのではないか。
プレミアリーグでの実績
カーディフからアーセナルに若くして移籍したラムジーはプレミアリーグ経験が豊富であり、立派な成績を残している。262試合40ゴール51アシスト…これは目を見張る実績だろう。チャンピオンズリーグでも49試合に出場しており、ヨーロッパでも十分な経験を積んでいる。ウェールズ代表でも58試合で14ゴールを決め、ユーロ2016でのベスト4入りにも大きく貢献している。
アーセナル加入当初は出場機会の確保に苦労していた印象だが、徐々にベンゲルサッカーに欠かせないピースとなり、2011/12シーズンからはコンスタントに試合に出ている。怪我がちな印象もある中、毎年30試合以上に出場しているのは頼もしい。
イングランドサッカーで育っているため、プレミアリーグも熟知しており、環境への適応もなにも問題ない。言語的なハードルもなく、ホームグロウンの人数として数えられるのはクラブにとって有難い。
得点もアシストもできる選手
チアゴよりも前線で能力を発揮できる選手であり、得点もチャンスメイクも両方できるのが最大の魅力。曖昧なポジショニングでMFとDFの間でボールを受け、パスで展開。自身も前線に飛び出しては得点に絡む。まさにワイナルドゥムが担当する役割に近しい能力を有している。
チームのために走れる選手でもあり、終盤まで走りきれる体力もある。中盤の適切かつ激しいプレッシングが生命線のリバプールにとっては打ってつけの人材であり、いまのフォーメーションにそのまま当てはめられる。
さらに言えば、フロントスリーやフィルジル・ファンダイクのヘッドに頼り気味の得点力の強化にも繋がる。チアゴだと深い位置やペナルティエリア付近からのチャンスメイクはできるが、ゴールは期待できない分、インサイドハーフのポジション適性だとアーロン・ラムジーに軍配が上がる。
給与がちょっと高過ぎる?
ジョーダン・ヘンダーソンやジェームズ・ミルナーら功労者が週給140,000ポンド(約1960万円)と同等の給与をもらっている。続くアレックス・オックスレイド=チェンバレインやナビ・ケイタですら週給120,000ポンド(約1680万円)を受け取っている。
リバプールMF陣の給与体系を考慮すると、現在の給与である週給150,000ユーロ(約1950万円)は支払えない。多少の減額をラムジー側が飲まないといけないため、経済的なメリットは提示できないだろう。
それでも、持っている能力や経験値はチアゴ・アルカンタラに引けを取らない。特徴が異なるため、純粋な比較は難しいが、インサイドハーフのポジションにおける強化を狙っている場合は、アーロン・ラムジーがより賢明な選択になるかもしれない。
プレミア勢からはエバートン、イタリア勢ではローマやナポリなど興味を抱くクラブは少なくない。相思相愛のチアゴとは異なり、前所属のアーセナルへの帰還も否定できず、ライバルクラブへの移籍に躊躇する可能性もある。
アレックス・オックスレイド=チェンバレインのように、アーセナルからリバプールの流れに乗るか、そのままユベントスに残り競争に挑戦するか。はたまた、他のプレミアリーグやセリエAクラブへと移籍するのか。ウェールズ代表MFの去就は今夏の移籍市場における注目の的だ。