契約延長ならず、今夏でアンフィールドを去った元イングランド代表DFナサニエル・クライン。現時点でも移籍先が見つからず、無所属の状態が続いている。まだ29歳と老け込む時期ではなく、プレミアリーグでも十分に活躍できるだけの実力を兼ね備えており、移籍金がかからないため、獲得のチャンスが転がっている。
現在はクリスタル・パレスとのトレーニングに参加しており、チームを率いるロイ・ホジソン監督は契約の可能性に含みを持たせている。ジョエル・ウォードが右サイドバックのレギュラーで、マーティン・ケリーがバックアップとして控えている陣容で、枚数では揃っている印象を受ける。ただ、同じく元リバプールのマーティン・ケリーのパフォーマンスは危なっかしいと言わざるを得ない。
センターバックでの起用も可能であり、そのユーティリティ性は魅力的。それでも右サイドバックの控えとして、もしくは選手層を厚くするための一手としてクラインの獲得は理にかなっている。元々クリスタル・パレスのアカデミー出身で、トップチームデビューもクリスタル・パレスで飾っており、気心知れたクラブであることも大きなメリットだろう。
クラインと言えば、豊富な運動量で右サイドをアップダウンし続け、攻守共に貢献できる。2015年、リバプールのフィードクラブと揶揄されたサウサンプトンから加入した元イングランド代表は、加入2シーズンほどはスタメンの座を確保していた。
ただ、そこから長引く怪我に苦しめられることになる。長期離脱を幾度と経験し、復帰してもすぐに怪我が再発しても離脱してしまう。その間に、いまや世界でも有数の右サイドバックに成長したトレント・アレクサンダー=アーノルドやジョー・ゴメスが急成長。徐々にポジションを明け渡し、必ずしも必要な選手ではなくなってしまった。
途中ボーンマスへのローン移籍でキャリアの復活を試みたものの、いまいちインパクトは残せずに、ローン契約終了とともに、リバプールへと舞い戻る。その時には、ウルブズに移籍してしまったキ=ヤナ・フーフェルら若手が育ってきており、完全に居場所を失った。最後のシーズンになった2019/20シーズンが出場機会が全くなく、そのまま放出されていた。リバプールでは103試合に出場、2ゴール5アシストを記録している。
ジョエル・ウォードやマーティン・ケリーのように身長がさほどないが、スピード感溢れる攻撃参加と献身的で粘り強い対人守備は、クリスタル・パレスにとっては貴重なオプションとなるはずだ。移籍金も掛からず、クラブにはとても経済的。コロナ下で入場料収入がなく、裕福なオーナーがいないクラブにとっては、またとないチャンスだろう。
豊富なプレミアリーグ経験も後押しするはずだ。サウサンプトン、リバプール、ボーンマスと渡り歩いたクラインは、プレミアリーグ通算185試合に出場しており、トータルで4ゴール11アシストを数字で残している。カップ戦の他、ヨーロッパリーグでの経験もたくさんあり、経験値では群を抜いている。
果たして、元リバプールの右サイドバックはクリスタル・パレスとの契約締結となるか?ふたたびプレミアリーグを舞台に、右サイドで躍動するナサニエル・クラインを観たい…と勝手に思ってる。