2015年にユルゲン・クロップが就任してからも、主力として活躍を続けたブラジル代表MFフィリペ・コウチーニョ。サディオ・マネやロベルト・フィルミーノらが強力な攻撃陣を形成する中、それまで担当していた左ウイングからインサイドMFでの起用も多くなったが、持ち前のドリブルとパスセンスは健在であった。
インテル・ミラノから加入以来、順風満帆なリバプール生活を謳歌していたコウチーニョだったが、リーグ優勝やチャンピオンズリーグ制覇を成し遂げたい気持ちを抑えきれずに、2018年に巨額の移籍金を残して、バルセロナへと移籍した。この移籍金をもとに、フィルジル・ファンダイクやアリソン・ベッカーを獲得している。
その後、2018−19シーズンにチャンピオンズリーグ優勝。続く翌シーズンには悲願のプレミアリーグ制覇を勝ち取ったリバプールとは対照的に、ブラジル代表MFはバルセロナにフィットできず、出場機会は徐々に減っていった。
チャンピオンズリーグでは3シーズン連続で記憶に残る敗退を喫したバルセロナを横目に、昨シーズンにローン移籍したバイエルン・ミュンヘンで求め続けたチャンピオンズリーグ優勝を成し遂げた。今季はバルセロナに舞い戻り、新監督ロナルド・クーマンの信頼を勝ち得て、スタメンに定着している。
2017年の夏の移籍市場において、執拗にフィリペ・コウチーニョを求めたバルセロナ。最終的には2018年の冬に完全移籍となるわけだが、夏から冬にかけてのバルセロナとリバプールとの間で行われていた交渉の内容を記したメールが流出したらしい。
アンドレス・イニエスタの後釜確保が急務だったバルセロナは、2017年の夏に3度に渡るオファーを繰り返しており、いずれも門前払いを受けたようだ。初回のオファーは7200万ポンド(約100億8000万円)。この時点で巨額だが、2017年7月20日に拒否されている。さらに、リバプールはいかなる金額であったも放出するつもりがないことを伝えている。
しかし、バルセロナは忠告を無視して2度目となるオファーを提示する。9000万ポンド(約126億円)にも及ぶ条件提示が、2017年8月初旬に行われた。メール文面によると、スポーティング・ディレクターであるマイケル・エドワーズがさらなる忠告とともに、オファーを拒否している。
“I ask you amicably to stop harassing Coutinho publicly and privately.” – 公の場やプライベート関わらず、コウチーニョを困らせる言動を止めるよう、友好的に依頼します。
“No amount of money will change our minds.” – いかなる金額でも、私たちの気持ちは変えられない
強めの警告にも関わらず、バルセロナは3度目のオファーを提示した。1億1400万ポンド(約160億円)という途方もない金額を提示したものの、リバプールは断固拒否の構えを崩さない。激しい攻防戦の末、ブラジル代表MFは2017-18シーズン開幕をアンフィールドで迎えた。
それでも、バルセロナは諦めなかった。シーズン途中の2018年1月の移籍市場でも、粘り強くコウチーニョを求め続ける。この頃になると、コウチーニョ本人がクラブに移籍志願を行い、スペインへの移籍したい気持ちを全面に押し出すようになり、ようやくクラブ間の交渉が始まるようになった。
1億4200万ポンド(約198億円)にも上る多額の移籍金で交渉がまとまった。多大な収益を残し、世界トップクラスの選手たちを獲得するための移籍金に充て、数々のタイトル獲得にと成功を収めたリバプール。ネイマールバブルの中で、移籍金の吊り上げに成功したマイケル・エドワーズの手腕には脱帽。
フィリペ・コウチーニョの移籍がターニングポイントとなり、守備陣が世界でもトップクラスに成長したため、ある意味では陰の立役者としてブラジル代表を推薦する声も多いとか、少ないとか…選手獲得だけが注目される一方で、放出戦略にも着目したいところだ。