リバプールのスカティングチームは各国隅々までカバーしており、強力なネットワークにより、実力よりも低く評価されている選手を見つけ出す原動力になっている。いまでは世界最高峰のレフトバックに成長したアンディー・ロバートソンは好例。降格したハル・シティ在籍時は、ヨーロッパでは無名の存在だったため、わずか800万ポンド(約11.2億円)のバーゲン価格で獲得に至った。
その後の活躍は言わずもがな。欠かせない存在であるジョルジニオ・ワイナルドゥムも然り。ニューカッスル時代も活躍していたものの、ビッグクラブでスタメンを張れるレベルだと認識していたクラブは少ない中、リバプールは選手の能力を見抜く能力を発揮した。
プレミアリーグ王者は、バーゲン価格での補強をふたたび狙っている。その選手が、リーグアン・リール所属MFレナト・サンチェス。イタリアでの報道によれば、リバプールとはクラブ間合意が済んでおり、個人間合意を残すのみとなっている。金額は概ね1800万ポンド(約25.2億円)と考えられている。
サッカーファンなら一度は聞いたことがある名前『レナト・サンチェス』。それもそのはずで、EURO2016に若干18歳で出場し、年齢に似合わないプレーで自国ポルトガルの初優勝に大きく貢献した。大会後には、ベンフィカから移籍金3500万ユーロ(約45.5億円)でバイエルン・ミュンヘンに引き抜かれた。
しかし、ドイツでは目立った活躍ができず、ローン移籍したスウォンジー・シティでも印象的なパフォーマンスを披露できず、18歳をピークにサッカーキャリアに陰りが見え始めていた。キャリアの再興を狙う元ポルトガル代表MFは、フランスに新天地を求めて2019年に移籍。
加入初年度の昨シーズンはチャンピオンズリーグ含め30試合に出場。怪我の影響もあり、今シーズンは出番が少ないが、ヨーロッパリーグ含め10試合に出場し、1ゴールを奪っている。爆発的な復活劇とはなっていないが、少しずつプレー時間を確保し、キャリアを反転させつつある。
今回の報道の真意はまだ不明である。ただ、中盤のダイナモ獲得を目指す背景には一定の理解ができる。契約延長問題に揺れるジョルジニオ・ワイナルドゥムの退団が現実味が帯びてきており、もし退団を決意した場合に、守備にも奔走でき、かつ対人でも負けないMFの選択肢が限りなく少なくなってしまう。
ナビ・ケイタやアレックス・アレックス・オックスレイド=チェンバレンは攻撃に魅力がある選手であり、守備面はやや苦手としている。ジョーダン・ヘンダーソンとジェームズ・ミルナーはともにベテランの域であり、調整しながらの戦いが求められる。
アカデミーのレイトン・クラークソンらポテンシャルの高い中盤の選手はいるが、やはり経験値が問題となる。その点、代表経験もあるレナト・サンチェスの獲得は論理的には良い選択だろう。試合に出られなかったとはいえ、バイエルン・ミュンヘンという世界での有数のクラブに在籍経験もあり、多くのスター選手とともにプレーしてきている。
経験やプレースタイルの観点から、獲得自体は面白そうだ。問題はレナト・サンチェス獲得発表の瞬間に、ワイナルドゥムの退団がほぼ決定的になること。両選手の共存もあり得なくはないが、似たようなタイプの選手を保有するのは考えにくい。
はたして、かつてのポルトガル期待の星レナト・サンチェス獲得を目指すのか?来年1月には真相が明らかになるはずだ…