2018年にアリソン・ベッカーをASローマから獲得して以来、リバプールは即戦力ではなく、長期間に渡りクラブを支えられる若手選手の補強に大きく舵を取っている。フラムから加わったハーヴェイ・エリオットを筆頭に、セップ・ファン・デン・ベルフやビリー・クメティオ、マルセロ・ピタルーガ、マテウス・ムジアロウスキーら各国のユース世代を代表する選手たちを次々に獲得している。
ディオゴ・ジョッタもまだ24歳であり、南野拓実も加入した当時は25歳前後。各ポジションに主要メンバーが揃った段階で方針が変更されたことは明白で、世界的GKアリソンの加入が転換期であった。
主力組が30歳前後となり、今夏には幾分かまとまったお金を費やし、各ポジションをグレードアップさせる必要性も感じるが、それでもユース世代の選手への投資は怠らない。代表格ハーヴェイ・エリオットはローン先ブラックバーン・ローヴァーズで大ブレイク。来シーズンはモハメド・サラーを脅かす存在に成長することが期待されている。
アカデミー育ちのカーティス・ジョーンズやネコ・ウィリアムズ、リース・ウィリアムズらも負傷者続出の影響もあり出場機会を得ており、ユルゲン・クロップ監督は若手に積極的にチャンスを与える。財政問題があったとはいえ、ドルトムント時代も若手選手を信じ、起用し続けられる監督であり、トッププレーヤーと公式戦でともにプレーできる機会は魅力的だろう。
今回新たなに獲得リストに加わったのは、バイエルン・ミュンヘン所属MFジャマル・ムシアラ。シュトゥットガルトで生を受け、その後サウサンプトンアカデミーやチェルシーユースを渡り歩いた逸材。2019年からは母国に戻り、王者バイエルンの下部組織で順調にステップアップしている。今シーズンはブンデスリーガでも出場しており、すでに3ゴールを決めている。
イングランド代表もしくはドイツ代表のどちらでもプレーできる可能性を残す、まもなく18歳になるジャマル・ムシアラの能力はドイツで高く評価されている。プレーひとつひとつ荒さが目立ち、フィジカルも追いついていない。それでも卓越したテクニックやドリブル能力、攻守の切り替えなど兼ね備えており、トップレベルで戦える強度が身に付けば、恐ろしい選手になり得る。
ブンデスリーガ公式ではトッテナム・ホットスパー所属MFデレ・アリとの比較される新星は、今季ドルトムントへ移籍したジュード・ベリンガムらとともに、将来世界を代表しうるミッドフィルダーに数えられている。
才能抜群の元チェルシーMFには、多くのクラブが動向を追っていると言われ、その数はなんと7クラブ。ジュード・ベリンガムがバーミンガム・シティから移籍した際の金額が、3000万ポンド(約42億円)。同等の移籍金が必要になりそうだが、契約期間が18ヶ月を切っており、若干の格安価格での獲得が見込める。
年齢が若く、移籍金も比較的安い。アレックス・オックスレイド=チェンバレンやナビ・ケイタが細かな負傷を繰り返し、継続的に貢献することが難しい。シェルダン・シャキリは放出候補で、ジョルジニオ・ワイナルドゥムにも退団の可能性が残っている。即スタメンが厳しいが、中盤の枚数を揃えつつも、驚異的な成長が見込めるジャマル・ムシアラ獲得は合理的に思える。
しかし、報道によれば、問題点も報じている。それが、彼の代理人が望んでいる給与。リバプールにおいては、トップ10にも入り込む高給を希望していることが、バイエルン・ミュンヘンも契約延長を躊躇している原因らしい。
即戦力とは言えない選手に、お財布の紐が堅いリバプールだけに、希望額が下がらない限りは獲得には動かないだろう。むしろ、試合経験が浅い10代の若手に高給を支払える余力があるクラブは、限られている。
リバプールでも見てみたい選手ではあるものの、バイエルン・ミュンヘンとの契約延長が現実的な路線。移籍するにしても、キャリアのステップアップも踏まえると、古巣チェルシーやマンチェスター勢、スペイン2強くらいしか給与額を前向きには検討してくれないはず。来シーズンもドイツで成長を継続させるのか?それとも、新天地での飛躍を狙い、移籍をするのだろうか…