昨年の夏、バイエルン・ミュンヘンから鳴り物入りで加入したスペイン代表MFチアゴ・アルカンタラ。ブラジル代表の父と弟を持つ、サラブレッドはバルセロナのカンテラ育ちで、ドイツの地で世界的なミッドフィルダーへと成長を遂げた。
プレミアリーグでは、順風満帆とは言い難い。フィルジル・ファンダイクが長期離脱したエバートン戦で危険なタックルを受け、前半戦のほとんどを棒に振っており、実践で連携を高めることができなかった。年を跨いで出場機会が増えたものの、コミュニケーションや守備への負担を強いられ、本来のプレーを発揮しているとは言えない。
センターバックが呪われているリバプールでは、ファビーニョやジョーダン・ヘンダーソンが最終ラインでの出場を余儀なくされ、ジョルジニオ・ワイナルドゥムが中盤の底に定着。激しいプレッシングやボール奪取に優れた選手が最終ラインに吸収されたことで、守備時における中盤の強度が落ち、決してフィジカルが強くないチアゴが身体を張らないといけないシーンも散見された。
RBライプツィヒとのセカンド・レグで組んだセンターバックのパートナー(オザン・カバクとナサニエル・フィリップス)が定着してくれれば、ファビーニョをアンカーに、ワイナルドゥムが中盤で高い守備意識を植え付けられる。つまるところ、チアゴがより攻撃的な仕事に全うできる。ロベルト・フィルミーノやディオゴ・ジョッタら前線との連携が改善されれば、引いた相手にも対応できるリバプールへと生まれ変われる。
徐々に持ち味を出しつつあるスペイン代表MFに、新会長が決まった古巣バルセロナが獲得に動き出しているようだ。ローンでの移籍を画策しており、追々は完全移籍へと移行を検討している。例え、具体的なオファーが提示されようともリバプールが反応するとは思えないが、シャビやアンドレ・イニエスタの退団以来失われたティキ・タカ復活への足がかりにも興味深い選手であることは確かだ。
ユルゲン・クロップ監督含め、リバプール首脳陣が1年限りで放出を検討する可能性は限りなく低い。プレミアリーグへの適応もまだ途上であり、来シーズンにおける活躍に期待を抱いてすらいるだろう。能力は疑いの余地がなく、周囲との連携が高まれば、驚異的なパスでゴールを演出するシーンを数多く見られるようになるはず…
世代交代を目指すバルセロナが、29歳となった選手へ興味を持つことは考えにくく、あくまで噂のレベルを出ない。それでも、期待の新星ペドリら若手選手のお手本となるべく、スペイン語が母語のチアゴ・アルカンタラに目を向けるのであれば合点がいく。
加えて、ロナルド・クーマン監督がオランダ代表を務めていたときの同胞MFワイナルドゥム獲得にも動いているとされているだけに、同じクラブから2枚獲りは困難極まりない。まして、クーマン監督続投も決定していないだけに、現段階で来シーズンの補強プランは策定されていないと見るべきだろう。
ラ・リーガ奪還を目論むバルセロナで、新会長が決まったばかり。移籍の噂が立て続けに出るのは致し方ないことであり、今後もあらゆる選手への関心が報道されると予想する。読みモノとしては面白いが、リバプールファンとしては、来シーズンは”本来”のチアゴ・アルカンタラが戻ってくることを祈っている…