イングランド・プレストン出身で、リバプールアカデミーで育ったDFリース・ウィリアムズ。昨シーズンは半年間キダーミンスターへのローン移籍を経験し、今シーズンはリバプールU-23で力を磨く予定であった。しかし、ディフェンスリーダーであるフィルジル・ファンダイクやジョー・ゴメスらがシーズン序盤に長期離脱が確定し、トップチームへの昇格を半ば強制された格好だ。
チャンピオンズリーグではアヤックス戦をはじめ出場機会を得ており、アタランタ戦ではスタメンでチーム勝利に貢献した。一方、プレミアリーグでは昨年10月と11月にそれぞれ一度ベンチ入りを果たすものの、出番は巡ってこず、リーグ戦デビューは12月までお預けとなった。2020年12月16日待望の瞬間が訪れる。ジョエル・マティプの負傷に伴い、先発の座を射止めたウィリアムズは、待望のプレミアリーグデビューを果たした。
対戦相手は当時首位攻防を繰り広げていたトッテナム・ホットスパー。ジョゼ・モウリーニョ監督らしい堅守速攻を高いレベルで展開し、エースであるハリー・ケインと相棒のソン・フンミンが見事な連携から、驚異的なペースでゴールを挙げていた。調子に乗りまくっていたスパーズ相手に、19歳だったウィリアムズはブラジル代表MFファビーニョとセンターバックのコンビを組んだ。
試合展開はモハメド・サラーの得点で先制に成功したリバプールだったが、トッテナムFWソン・フンミンがオフサイドギリギリで抜け出し、同点弾を奪う。その後は両者とも決め手に欠き膠着状態が続き、試合終了直近でロベルト・フィルミーノが劇的な決勝ゴールを挙げ、リバプールが勝ち点3をもぎ取った。
リース・ウィリアムズは元々スタメンではなく、元シャルケDFマティプの出場回避が試合開始直前に決定され、急遽出番が巡ってきた。ベンチで試合には出ないと思っていた中で、しかも対戦相手が好調なチーム。いきなり降ってきたチャンスではあったが、選手本人はナーバスな精神状態だったようだ。
「出場する予定じゃなかったから、緊張していた。ジョエル・マティプがスタメンで、僕はベンチだと思っていたからね。」
「彼は背中に問題があって、監督とファーストチーム・コーチが僕のところに来て、今日はスタメンで行くから準備しておけ!マティプがフィットネス・テストに合格できなかった…と言われたんだ。」
「あれはたしか5〜6時間前の出来事で、そこからは頭を切り替えなければいけなかった。なにせプレミアリーグで初めての試合だったし、しかもケイン&ソンと戦うんだからね。」
「ナーバスな状態だったけど、チームメイトが支えてくれた。」
ソン・フンミンにスピードで置いてけぼりになる場面も散見されたが、デビュー戦としては次第点。コンビを組んだファビーニョのカバーリングが秀逸であったが、世界的なストライカーを相手に、十分な戦いぶりを披露した。
その後はカップ戦を中心に、プレミアリーグでも2試合に出場。全体で13試合(20201年3月21日時点)でトップチームでのプレー経験を得ており、着実に経験値は高まっている。しかし、スピードのなさは致命傷になりかねない。トッテナム戦問わず、簡単に振り切られるシーンも多く、ファーストチームで固定されるには、的確なポジショニングを学ぶ必要がありそうだ。
ともにセンターバック陣の負傷続出の穴を埋めているナサニエル・フィリップスほどの強みがないのも、出場数が伸びない原因かもしれない。空中線で異常な強さを見せるフィリプスに加えて、1月に加入したオザン・カバクはバランスの良いディフェンダーであり、純粋な能力値で上回られている。よって、序列は3番手であり、主力組が戻ってくる来シーズンは、U-23もしくはローンで成長を続ける流れになるだろう。
長年育ったクラブで、しかもホームスタジアムでプレミアリーグデビューを飾れた今シーズン。デビューをキャリアのピークにするのではなく、数年後にはトップチームに定着し、ファンダイクやマティプに代わる頼れるセンターバックとして君臨して欲しい…