ボルシア・ドルトムントで覚醒し、レアル・マドリードへと移籍したベルギー代表FWエデン・アザールの後継者として大きな期待を抱え、チェルシーに入団アメリカ代表FWクリスチャン・プリシッチ。プレミアリーグへの適応や怪我にも苦しみ、ドイツでの輝きを放てずにいる。時折、凄まじいスピードとドリブル突破で目覚ましい活躍を見せるが、いかんせん継続性に欠ける。
さらに、フランク・ランパード監督の解任が出場機会へ影響を与えている。後任トーマス・トゥヘルが監督に就任して以来、明らかに出番を減らしており、出場時間は急激な減少を余儀なくされている。同じくドリブラーであるカラム・ハドソン=オドイが優先されている印象で、指揮官からの評価は決して高いとは言えない状況に置かれている。
苦しい時間を過ごす元ドルトムントFWに対して、プレミアリーグでも長い間活躍し続けた元アメリカ代表GKブラッド・フリーデルがアドバイス。プリシッチの凄みを強調した上で、チェルシーよりも、リバプールのプレースタイルが合っていると、自らの考えを明かしている。
「彼は非常に速く、ファーストステップも巧みで、前線へ飛び出していくときにはさらに加速していく。ユルゲン・クロップ監督が好む、迅速なカウンターアタックを繰り出し、相手ディフェンスラインを破っていくようなプレッシング・スタイルであれば、もっと良いパフォーマンスを披露できると思う。」
「彼ら(リバプール)がどのような選手を欲しているかは、全くわからない。でも、彼らのシステムは、プリシッチのような選手には理想的だね。」
「プリシッチはヨーロッパで最も成功したアメリカ人プレーヤーになれる可能性を秘めている。チェルシーの監督が代わってまだ日が浅いため、今後トゥヘル監督のもとで成功してくれることを願っている。」
「シーズンの開幕当初は、なかなかプレーできなかったけど、そんな中でもうまくやっていた。状況を見守っていくしかないだろう。彼はアメリカで最も優れた攻撃的選手であり、他にはいない。とにかく、負傷しないように過ごして欲しい。」
同国代表を擁護する気持ちを差し引いても、調子に乗ったときのプリシッチは誰にも止められない。得点に、アシストにも縦横無尽に守備陣をきりきり舞いにし、チームを勝利へと導く。フリーデルも発言している通り、まずは怪我にならずに、その上で継続性を身に付ける必要がある。良いときと悪いときの差が激しい選手は、どの監督にとっても使いにくい。
一方、リバプールとの関係は全くないわけではない。ドルトムント在籍時から、元ドルトムント監督であるクロップ監督の繋がりで獲得の噂は絶えず出ており、チェルシー移籍に際しても、リバプールも獲得に動いたと主張するメディアもあるほど。具体的なオファー提示は不明だが、強い関心を持っていたのは事実と言っても問題ないだろう。
ただ、すでに強力なスリートップを有していたリバプールにおいて、多額の移籍金がかかるアメリカ代表FWを控えに置いておくのは忍びないし、もったいない。モハメド・サラーやサディオ・マネほどの爆発的な得点力があるタイプではなく、典型的なウインガーであるプリシッチを獲得するには至らなかった。不調に陥っている現時点においても、それは変わらないと思われる。
無論、チェルシーがライバルに主力級の選手を放出するわけがない。凄まじい縦へのスピードに、突破力を持っいる選手だけに、プレミアリーグ王者にとっては魅力的な選択肢に映るかもしてない。しかし、最近噂に上がっている選手たちは、より鋭い感覚を持つ前線の選手であり、少し特長が異なる。
ディオゴ・ジョッタがすでに結果を残しており、来季にはハーヴェイ・エリオットが戻ってくる。ディボク・オリギやシェルダン・シャキリ放出で得るであろう移籍金を費やすべきは、ストライカーであり、これまた特長が異なる。
とはいえ、赤いユニフォームを着たクリスチャン・プリシッチが、最強フロントスリーと絡む姿を見てみたいのは、誰もが望むところ…だろう…