リバプールは2019年にPECズヴォレからオランダU-19代表センターバックを獲得した。セップ・ファン・デン・ベルフはカラバオカップ3回戦MKドンズでデビューを飾ると、4回戦のアーセナル戦、準々決勝アストン・ビラ戦と立て続けに先発起用され、イングランドで順調なスタートを切った。
UEFAユースリーグでもアンダーカテゴリーで欠かせない存在として、ベスト16でベンフィカ(ポルトガル)に敗れるまでの全試合に出場。2020年プレシーズンキャンプでもトップチームに帯同し、さらなる出場機会確保を目指すシーズンとなるかに見えたが、異なるストーリーが待ち受けていた。
1m95cmの高身長に加え、強靭なフィジカルに恵まれたフランスU-18代表DFビリー・クメティオがプレシーズンで脚光を浴びる。さらには、センターバックが緊急事態に陥った時期には、ナサニエル・フィリップスやリース・ウィリアムズが優先され、ベンチ入りすらできずにいた。
足元の技術や試合を読む力を有しているものの、イングランドサッカーへの適応に苦しんでいた。めまぐるしく展開が入れ替わり、フィジカル勝負も多いサッカーに戸惑いを隠せず、チーム内での序列はどんどんと下がっていった。
転機が訪れたのは、今年冬の移籍市場。プレストン・ノースエンドに半年間のローンで加わると、最初の数試合をのぞき、先発メンバーに名前を連ねた。ポジションはセンターバックではなく、右サイドバック。シーズン終盤には右サイドミッドフィルダーとしても起用が増え、新たな可能性を示した。
チャンピオンシップで16試合に出場したオランダU-19代表ディフェンダーを来シーズンも留めたいプレストンは、すでにリバプールにコンタクトを取った模様。他にも同じくチャンピオンシップに所属するクラブ、ドイツやスイスのクラブからも問い合わせがあり、次の移籍先を模索している。
主力センターバックが復帰するリバプールでは、出場機会はほとんど見出せない。バックアップ陣にもフィリップスとウィリアムズ、さらにはクメティオも控えており、カップ戦すら出番は巡ってこないだろう。
来シーズンは1年間のローン移籍が濃厚であり、しっかりと出場機会が得られるクラブに選手を預けたい。プレストンであれば問題なく出番は与えられるが、本職ではないポジションでの起用にどれほど前向きかが気がかりだ。
リバプールにも想定する成長プロセスがあるはずで、センターバック以外でのプレーを貴重な経験値と取るか否かが鍵になりそう。半年間とはいえ慣れ親しんだクラブだけに、同じクラブへの移籍が選手にとっても心地よい選択になりそうだが、契約を結ぶリバプールの判断には注目が集まる…