時速37.16km。この数字を目にした時、あなたは何を想像するだろうか。高速道路を走る自動車の速度だろうか。いや、これはひとりのサッカー選手がピッチ上で叩き出した、ブンデスリーガ史上初となる記録だ。
ジャン・マテオ・バホヤ。アイントラハト・フランクフルトに所属する20歳のウインガーは、昨シーズンのボーフム戦でこの驚異的な記録を樹立し、ドイツサッカー界に衝撃を与えた。そして今、この若きフランス人アタッカーがアルネ・スロット率いるリバプールのターゲットリストに名を連ねている。
イギリスメディア『Anfield Watch』によれば、リバプールのスカウト陣はバホヤの爆発的なスピードと精緻なドリブル技術に強い関心を寄せているようだ。
1月の移籍市場で大規模な補強を計画していないリバプールだが、左ウイングのオプション拡充については真剣に検討を進めている。コーディ・ガクポと競い合える選手を探すスロットにとって、スピード、技術、そして何より若さという武器を持つバホヤは、リバプールの未来を担う可能性を秘めている。
バホヤがリバプールのレーダーに映った背景には、興味深い人間関係が存在する。昨シーズン、フランクフルトでユーゴ・エキティケとの息の合った連係プレーを披露し、ブンデスリーガのディフェンス陣を翻弄してきた。
そのエキティケこそ、今夏リバプールがフランクフルトから7900万ポンドで獲得したストライカーだ。既にチーム内に気心の知れた仲間がいるという事実は、新天地での適応を劇的に加速させる要因になり得る。
クラブ間の関係性も見逃せない。リバプールはエキティケの移籍交渉を通じてフランクフルトとの良好な関係を構築しており、この人脈が将来的な交渉を円滑に進める可能性がある。
信頼関係が醸成されたクラブ同士の交渉は、金額だけではなく、選手にとって最善の環境を整えるという共通の目標に向かって進みやすい。バホヤの移籍が実現すれば、それはリバプールとフランクフルトの建設的なパートナーシップの証明になるだろう。
フランクフルト側もバホヤの価値を十分に理解している。クラブはチーム内での重要性が高まっている彼に対し、スターターとしての地位を反映した新たな契約条件を提示して引き留めようとしている。
だがここに、リバプールにとってのチャンスが生まれる。もし契約交渉が難航し、バホヤが新契約にサインしない場合、リバプールは比較的手頃な価格で彼を獲得できる可能性がある。
現代の移籍市場において、確立された才能を持つ若手ウインガーを割安で手に入れられる機会は極めて稀だ。フランクフルトとしても、契約最終年に突入する前に適正な移籍金を得たいという思惑があるだろう。両者の思惑が交錯する中、リバプールは慎重に契約交渉の行方を見守っている。
アンソニー・ゴードン、マリク・フォファナ、ブラッドリー・バルコラといった選手への関心を示していたリバプールだが、17歳の逸材リオ・ングモハへの信頼を選び、他のポジションに資金を集中させた。ングモハは素晴らしいプレシーズンを経て、今シーズンはファーストチームでの機会を得ているが、長いシーズンを戦い抜くには、より経験豊富なオプションも必要になる。
リバプールはブンデスリーガから選手を獲得することに定評がある。過去の成功例を見れば、ロベルト・フィルミーノ、サディオ・マネ、ジョエル・マティプなど、ドイツでプレーしていた選手たちがアンフィールドで輝きを放ってきた。
ルイス・ディアスを放出したことで、左ウィンガーの層が薄くなったリバプール。フェデリコ・キエーザやリオ・ングモハらはコンディションこそよさそうだが、ガクポへの絶大なる信頼には劣っており、数多くのチャンスを得ているとは言い難い。
そうした観点からもポジションを争えるレベルの選手は必要不可欠と言え、ジャン・マテオ・バホヤに白羽の矢を立てる可能性もゼロとは言えないのかもしれない…
