サッカーの世界は、一瞬の決断が未来を大きく変える。リバプールのアカデミーで磨かれ、将来を嘱望された若き才能、タイラー・モートンが、今夏フランスのオリンピック・リヨンへと旅立ったことは、多くのアンフィールドのサポーターにとって、胸に刺さる出来事だった。
しかし、その決断が彼のキャリアを劇的に加速させた事実は、わずか数ヶ月で明らかになった。リヨンで披露している圧倒的なパフォーマンスは、ふたたびプレミアリーグのクラブ、特にクリスタル・パレスの熱烈な視線を引きつけていると、フランスメディア『Jeunes Footeux』が報じた。
クリスタル・パレスがモートンに熱視線を送る理由は、中盤の要とも言えるイングランド代表MFアダム・ウォートンの去就が影響している。プレミアリーグのみならず、レアル・マドリードも関心を示す存在に成長しており、来夏以降の移籍が噂され続けている。
万が一にも21歳MFが退団してしまった場合、その創造性とゲームメイク能力の穴を埋める存在として、フランスで覚醒した23歳のミッドフィルダーは理想的な補強になり得る。パレスの中盤に新たな秩序とダイナミズムをもたらせる合理的な判断と言える。
リバプール時代、モートンはブラックバーン・ローヴァーズやハル・シティへのレンタル移籍を通じて、イングランドのタフなフットボールを肌で学んだ。特にハル・シティでの経験は、アカデミーの優等生から、試合を支配できる中盤の核へと変貌させた。
中盤の底から繰り出される正確無比なロングパスと、相手のプレスを無力化する冷静なボールコントロール。ピッチ全体を俯瞰するその視野の広さは、彼が現代フットボールにおける “レジスタ” の資質を完全に備えている。
リバプールにとっても売却時に買い戻しオプションや将来的な売却益の一部を受け取る条項を盛り込んでいる可能性が極めて高く、もしパレスへの移籍が実現すれば、アンフィールドのクラブにも大きな経済的恩恵がもたらされることになる。
他方、アカデミー育ちの選手の帰還を熱望する声も根強い。アルネ・スロット監督は昨シーズン、あまりモートンを起用してなかったことからもオランダ人指揮官にとっては優先度の低い選手であったが、リヨンでのプレーぶりは同監督の意見を変えるのには十分すぎる。
わずか1年間でフランスを後にするとは思えないものの、ここまでの活躍が続くようであれば、プレミアリーグを筆頭に複数クラブの争奪戦が勃発しても不思議ではない。
はたして、リバプールの下部組織で育った23歳のミッドフィルダーは、今後どのようなキャリアを歩むのか注目が集まる…
