アンフィールドを包む熱狂的な空気は、一瞬たりとも冷めることを知らない。プレミアリーグの覇権争いは熾烈を極め、アルネ・スロット監督率いるリバプールは、さらなる高みを目指して水面下で動きを加速させている。
そのターゲットリストの最上位に、今、最も熱い視線が注がれている選手がいる。ボーンマスの電光石火のアタッカー、アントワーヌ・セメニョで、年齢による衰えが目立ち始めたエジプト代表FWモハメド・サラーの後継者として大本命と見られている。
今夏の移籍市場で、リバプールやマンチェスター・ユナイテッドといった巨大クラブからの触手をかわし、ボーンマスと新たな契約を結んだセメニョ。この契約更新は、一見、チェリーズにとっての勝利に見えた。しかし、その契約書には、リリース条項が仕込まれていたことが明らかになった。
海外メディア『The Athletic』の報道によると、ガーナ代表ウィンガーの新契約には、6500万ポンドという、現代の市場価値から見ても破格のリリース条項が設定されているようだ。この金額は、今夏の彼の評価額7000万ポンドをわずかに下回る設定であり、買い手側にとっては、長期にわたる交渉の手間を省き、確実に確保できる “バーゲン価格” に等しい。
ボーンマスがこの条項の存在を苦渋の決断として受け入れた事実は、彼らがセメニョの将来をコントロールする術を失ったことを物語っている。この条項は、特定のクラブに限定されることなく、どのクラブでも発動可能であり、ボーンマスは文字通り抵抗不能な立場に追い込まれている。
なお、この条項には厳格な発動期限が設けられており、リバプールやユナイテッドがその期限までに条項を起動させた場合、ボーンマスには後任を探すための時間的猶予がほとんど残されないという、極めて非情な条件が付されていると詳細に伝えている。
強靭な体幹を活かしたボール保持力、そして何よりも、前線からの猛烈なプレッシングは、サラーの衰えによって近年失われていた。相手ディフェンスラインに絶え間なく圧力をかけ続け、ボール奪取の起点となる。攻撃的な貢献だけではく、献身的な守備意識はスロット・サッカーにバランスをもたらす。
加えて、左右のウイング、そしてセンターフォワードをもこなせる戦術的な多面性も評価に値する。サラー、コーディ・ガクポらレギュラー陣の他に、フェデリコ・キエーザやリオ・ングモハが控えるが、前者は信頼を100%勝ち取っているとは言い難く、後者はまだまだ成長段階。
そうした状況において、低調なパフォーマンスが続くサラーに代わって、右ウィンガーを任せられる25歳のアタッカーは理想的なターゲットに映る。左利きのエジプシャン・キングとは特性こそ異なるが、プレミアリーグを代表する攻撃能力を有することはボーンマスで証明済みだ。
過去にボーンマスでスポーティング・ディレクターを任されていたリチャード・ヒューズSDに加えて、この夏には同クラブからハンガリー代表DFミロシュ・ケルケズが加入。逆に、スコットランド代表FWベン・ドークがボーンマスに加わっており、両クラブの関係性は良好と言っていいだろう。
はたして、リバプールは現時点であまり機能していないスロット・サッカーを成就させるためのピースとして、ガーナ代表のセメニョに6500万ポンドを支払うのだろうか…?
