アンフィールドの右サイドに君臨する王、モハメド・サラー。彼の存在は、リバプールの近年の栄光の歴史そのものだ。契約は2027年まで延長されているものの、クラブの首脳陣は、その伝説的な時代が終焉を迎える日を冷静に見据え、次なる攻撃の核を模索している。
その答えとして、フットボール界に響き渡ったのが、ブラジル代表の技巧派ウインガー、ハフィーニャの名前。スペインの有力紙『Fichajes』は、リバプールが来夏の移籍市場で、バルセロナに所属する28歳の彼に対し、1億ユーロという巨額のオファーを準備していると報じた。
リバプールがハフィーニャにこれほどの投資を行う背景には、バルセロナの財政事情が深く絡む。バルセロナは依然として巨額の負債を抱え、ラ・リーガのファイナンシャル・フェアプレー規制の厳しい監視下にある。
2025/26シーズンにおいても、クラブは多額の移籍金収入を必要としており、ハフィーニャのような市場価値の高い選手は、その資金調達の鍵を握る存在。リバプールは、財政的な苦境を好機と捉えている。1億ユーロという提示額は、バルセロナが拒否し難い、痛みを伴うが不可避な選択を迫る、戦略的な価格設定だ。
リバプールがハフィーニャに魅了される理由は、ブラジル代表ウィンガーのハイブリッドな戦術的価値にある。サラーがゴールへの最短距離を突き進む純粋なフィニッシャーであるのに対し、ハフィーニャは “クリエイター” と “プレッサー” の役割を高いレベルで兼ね備える。
さらに、リバプールの戦術哲学に不可欠な要素が守備への献身性。ハフィーニャは、前線からの組織的な守備、90分間走り切るほどの運動量を誇る。リーズ・ユナイテッド時代には、マルセロ・ビエルサ監督の攻守に激しいサッカーに適応していただけはある。
サラーは近年守備の負担を軽減され、主に攻撃の最終局面にエネルギーを集中させるのに対し、ハフィーニャは攻守のトランジションにおいて、チームのギアを一段階引き上げる役割を担う。圧倒的な得点力を失うかもしれないが、チームとしてのバランスを得られる可能性が高い。
アルネ・スロット監督の誕生によって、リバプールはよりポゼッションとビルドアップの質を重視する方向にシフトしていることを考えれば、中盤と前線のリンク役として機能し、単調になりがちな攻撃にリズムと変化をもたらす能力もまた魅力的だ。
とはいえ、すでに28歳のアタッカーに対して1億ユーロは高額すぎる。また、他のターゲットが若きフランス代表FWマイケル・オリーセやボーンマスで圧倒的なフィジカルを発揮するガーナ代表FWアントワーヌ・セメニョであることを考慮すれば、年齢や移籍金でそれぞれオリーセとセメニョに軍配が上がる。
これまでも何度かリバプールからの関心が報じられてきたが、バルセロナを離れる未来図は描きにくい。また、現実的にリバプールの候補者リストに名前が記載されているとも思えず、あくまで噂のままで終わるだろう…