欧州サッカー界の移籍市場は、常に未来への投資で動いている。リバプールも例外ではなく、数年後の栄光を見据えたタレント発掘に余念がない。その視線が今、クロアチアの港湾都市リエカに注がれている。
HNKリエカの背番号10を背負うトニ・フルク。この24歳の攻撃的MFこそが、アンフィールドの新たな創造主として熱烈に求められている。地元クロアチアの有力紙『Novi list』が報じた事実は、欧州のトップクラブによる争奪戦がすでに始まっていることを明確に示している。
同紙は、フルクの試合にリバプール、ACミラン、トゥエンテ、サッスオーロといった複数のクラブのスカウトが派遣されていたと伝えた。昨夏は国外移籍が実現しなかったフルクだが、2025/26シーズンにおける彼の圧倒的なパフォーマンスは、もはやクロアチアリーグの枠に収まらないことを世界に知らしめている。
リバプールが熱を上げる理由は単純。彼の左足が持つ決定的な一撃の精度と、中盤の構造を根本から変えるゲーム支配力にある。このクロアチアの司令塔を、中盤の再構築を完成させるための最後の、そして最も重要なピースと見定めているそうだ。
HNKリエカの攻撃陣を牽引し、ピッチ全体を支配する司令塔として君臨する。彼のプレースタイルは、ボールを持てば常に前を向き、相手の守備ラインのわずかな隙間を縫うような、精密なパスを供給する。彼の左足から放たれるボールは、まるで意思を持っているかのように、味方の足元に吸い込まれていく。
1試合あたり平均2.08本のキーパスを記録。これは、90分間で2回以上、味方に決定的なシュートチャンスを創出している計算になる。さらに、アシスト期待値 (xA) は90分あたり0.18という高い数値を維持する。ゴールに直結する “キラーパス” であることを意味する。
強固な守備ブロックを敷く相手を崩す局面で、一瞬の閃きと精度を兼ね備えたパスの供給源が求められていたリバプールにおいて、フルクはその要求に応える存在になり得る。また、自らボールを運び、密集地帯を突破する能力も備えており、スロット監督の求めるものを持ち合わせている。
ただし、24歳という年齢は将来を見据えた補強ではなく、即戦力でなければならない。クロアチアで示している実力をそのままプレミアリーグでも披露するのは非常に難しいタスクであり、トップリーグでの経験不足は否めない。
加えて、この夏の移籍市場でドイツ代表のテクニシャン、フロリアン・ヴィルツを獲得している。ペナルティエリア付近での奇想天外なパス出しができるタイプで、自らもボールを運び、ゴールまで奪える逸材だ。
現時点では初めてのイングランドで本領を発揮できていないものの、そのポテンシャルは本物。タイプとして近しいミッドフィルダーに、2年連続で補強を実施するとは思えず、あくまで候補者のひとりとしてスカウトを行っただけと見るのが正しそうだ。
トップクラブともなれば、無数の選手のスカウティングを行うため、至って不思議なことではない。いきなりアンフィールドに降り立つとは考えいにくいが、イタリアやオランダ経由でリバプールのユニフォームに袖を通す可能性はあるかもしれない…
