アンフィールドを包む焦燥感は、深まるばかり。2025/26シーズンは、アルネ・スロット監督の下で新たなサッカーの哲学が根付くはずだった。しかし、蓋を開けてみれば、チームは依然として重い足取りを引きずり、勝ち点を落とす試合が続いている。
この停滞を打破するため、リバプールの強化部門は1月の移籍市場で極めて大胆な、そして時に非情とも言える決断を下す準備を進めている。その中心にあるのが、元イタリア代表FWフェデリコ・キエーザの去就だ。
キエーザはここ数ヶ月、頻繁にリバプールからの離脱が取り沙汰されている。その能力が傑出しているのは誰もが認めるところだが、スロット体制下で定期的な先発の座を掴めずにいる。28歳という、サッカー選手として体力と経験が最高潮に達する時期に、ベンチで過ごす時間はあまりにも貴重な損失だ。
英『Football Insider』が報じた内容によれば、リバプールはキエーザの売却を真剣に検討しており、彼を放出することで、チームの新たな核となるアタッカー獲得への資金を調達しようと画策している。
フェデリコ・キエーザが試合のピッチに立てば、必ず何かが起こる。それは、これまで短い出場機会の中で彼が示し続けてきた真実。彼は常にプロフェッショナルとして振る舞い、途中出場でも攻撃に火をつけ、停滞した流れを一気に変える能力を保持している。
しかし、スロット監督は起用しない。元々左ウィンガーとして活躍していたことから、本調子とは言えないコーディ・ガクポではなく、元ユベントスFWを使うのもひとつの手にも思えるが、オランダ代表ウィンガーへの信頼は根強い。
この夏にもイタリア帰還の噂が駆け巡ったが、残留を選んだキエーザだったが、このままでは自らのキャリアを浪費してしまう危険を肌で感じているに違いない。そして、セリエAの主要クラブ群は、この状況を虎視眈々と見つめている。
怪我から完全に立ち直り、フィジカルコンディションも万全となったキエーザは、市場に出れば争奪戦となり得る。リバプールにとっても売却益を即戦力の補強に充てる方が、低迷するチームを再建させる上での最速の道筋になるだろう。
キエーザが退団した場合、その穴を埋める、あるいはそれ以上の貢献を期待されるのが、ボーンマスのエース、アントワーヌ・セメンヨだ。爆発的なスピードや強靭なフィジカル、どのポジションからもゴールを奪える獰猛な得点力、そして前線全体を活性化させる推進力を持つガーナ代表。
今シーズンのプレミアリーグで目を覚ますような活躍を見せており、リーグ有数のダイナミックなアタッカーとして評価を固めている。かつてチームを支えたルイス・ディアスの抜けた後、リバプールーの前線は時折、硬直化する傾向が見られた。
この停滞した攻撃に、縦への強烈な突破と、守備陣を切り裂くアジリティをもたらす。前線の3ポジション全てでハイパフォーマンスを発揮できる彼の柔軟性は、スロット監督の戦術的オプションを格段に広げるだろう。
しかし、セメンヨの獲得には巨額の投資が必要となる。彼の移籍金は、ボーンマス側の強気の姿勢から、約6500万ポンドに達すると見込まれている。リバプールにとって、キエーザを放出して得られる移籍金を、いかにこの大型補強に繋げられるか、まさに資金調達と戦力強化の「玉突き」が成功の鍵を握っているだろう…
