2025年のカレンダーが残り一枚となり、マージーサイドの凍てつく風が肌を刺す季節が到来した。だが、アンフィールド周辺の熱量は下がるどころか、来るべき1月の移籍市場に向けて沸点へと達しつつある。
リバプールは長年の課題であった守備陣の再構築、とりわけ左利きのセンターバックという積年のミッシングリンクを埋めるべく、決定的な行動に出ようとしている。そのターゲットは、ポルトガルの名門スポルティングCPで不動の地位を築く24歳のディフェンダー、ゴンサロ・イナシオ。
スペインメディア『Fichajes』によれば、リバプール首脳陣はイナシオ獲得を「緊急の必要性」と位置づけ、1月のウィンドウが開くと同時に交渉を加速させる構えのようだ。
提示額は最大で8000万ユーロ。FSG(フェンウェイ・スポーツ・グループ)が冬のマーケットでこれほどの巨額を投じる姿勢を見せることは極めて稀。裏を返せば、それほどまでに現在のチーム状況において、ポルトガル人DFの獲得が不可欠であるとフロントが判断した証拠とも取れる。
アルネ・スロット監督体制となって2シーズン目、チームは新たなスタイルを確立しつつある。ユルゲン・クロップ時代のカオスを許容する激情的なフットボールから、よりコントロールとポゼッションを重視するスタイルへの移行。
この夏の移籍市場においては、前線を中心に多くの選手を獲得。フロリアン・・ヴィルツやアレクサンデル・イサク、ウーゴ・エキティケら高額な移籍金と引き換えにトッププレーヤーを確保したが、いまのところはその素材を活かしきれていない。
大型補強で生まれ変わったはずのアタッカー陣がいまだにチグハグな攻撃を見せ、スロット監督に解任論が飛び出るほどにチーム状況は芳しくない。そして、攻撃陣だけではなく失点の多さは批判の的になっている。
契約問題に揺れるフランス代表DFイブラヒマ・コナテは心ここにあらずのようなパフォーマンスに終始。フィルジル・ファンダイクも34歳になり、フィジカルやスピードの衰えは否めない。ジョー・ゴメスは期待値を超えるプレーを見せれておらず、ジョヴァンニ・レオーニは長期離脱中。
明るい話題のないセンターバックにおいて、かねてからリバプール移籍の噂も持ち上がっていたポルトガル代表ディフェンダーは適切なターゲットに見える。守備ができるだけではなく、最終ラインから放つパスで局面を打開し、攻撃のスイッチを入れる役割も担えるまさに現代的なセンターバックと言える。
右利きしかいないリバプールのセンターバック陣に加われば、明確なアクセントとして機能するだろう。ただし、スロット監督の熱視線はクリスタル・パレスのイングランド代表DFマルク・グエイに注がれている。
この夏にはアンフィールド行き直前まで迫っており、崩壊する最終ラインの再構築に向けて、フリートランスファーを待たずに獲得に乗り出す可能性も浮上している。プレミアリーグでも経験豊富で、代表でも数々の大舞台を経験してきた。
また、リーダーシップも持ち合わせており、オランダ代表のファンダイクの後継者として打ってつけの人材であることは誰の目にも明らか。8000万ユーロもの大金を投じて、イナシオ確保に動くよりも現実的かつ効果的な補強となるだろう。
とはいえ、センターバックが足りなくなる未来もあり得る。コナテが契約更新に合意しなければ、来夏に退団する。ジョー・ゴメスもスロット監督の信頼が厚いとは言い切れず、この夏にはACミラン行きが迫っていた。
一気に2名のセンターバックが去れば、グエイ獲得だけでは補えない。その時のターゲットとして、イナシオは選択肢としては面白いが、8000万ユーロで獲得に動くことはなさそうだ…
