プレミアリーグの強豪4クラブが熾烈な争奪戦を繰り広げるボーンマスのアントワーヌ・セメンヨに動きが見られた。25歳のガーナ代表FWは、移籍先としてリバプールを第一希望としていることが明らかになったと、イギリスメディア『TEAMtalk』が報じた。
マンチェスター・シティ、マンチェスター・ユナイテッド、トッテナムといったビッグクラブが6500万ポンドのリリース条項発動を検討する中、セメンヨ本人の意向がリバプールへの移籍実現に向けた大きな追い風となっている。
情報筋によれば、理論上はどのクラブのオファーも受け入れる用意があるものの、彼が自身の未来を描いているのはアンフィールドだという。解除条項は1月から有効になるが、ボーンマスに代替選手を探す時間を与えるため、発動には期限が設定されている。
この冬の移籍市場でセメンヨが動く可能性は極めて高い。ボーンマスはイプスウィッチのジェイデン・フィロジーンを後継候補として広範囲に視察しており、主力流出への準備を着々と進めている。クラブ側は今季終了まで残留させたい意向だが、解除条項が発動されれば抗う術はない。
リバプールがセメンヨ獲得に動く背景には、モハメド・サラーを巡る混乱がある。33歳のエジプト代表は今年4月に2027年までの契約延長を果たしたが、今季は深刻な不調と監督との確執に苦しんでいる。アルネ・スロット監督は先週末のリーズ戦後、サラーがインタビューで監督批判を展開したことを受け、チャンピオンズリーグのインテル戦でベンチ外とする強硬措置に出た。
サウジアラビアの複数クラブがサラーの獲得に動いており、アル・ヒラルとアル・イテハドが最有力候補として浮上。サウジプロリーグの幹部は、サラーの2026年中の獲得を確信していると公言した。
セメンヨは今季プレミアリーグで6ゴール3アシストを記録しており、ゴールクリエイティングアクションではリーグトップの7回を誇る。1対1の局面で相手を置き去りにする爆発的な加速力を持つ。左右どちらのウイングもこなせる適応力があり、中央のストライカーとしてもプレー可能。この多様性は魅力的な選択肢となる。
リバプールのスポーツディレクター、リチャード・ヒューズはボーンマス出身であり、2023年にセメンヨをブリストル・シティから引き抜いた張本人。昨夏のミロシュ・ケルケズ獲得でも両クラブの良好な関係が機能した。この人脈がふたたび交渉を後押しする可能性は高い。
ただし、リバプールの現状は決して明るくない。昨季プレミアリーグを制覇したスロット監督だが、今季は開幕から苦戦が続いている。直近12試合で9敗という壊滅的な成績に陥り、一時は12位まで転落した。11月下旬のノッティンガム・フォレスト戦では降格圏のチームに0-3で完敗し、チャンピオンズリーグのPSV戦では1-4の屈辱を味わった。
夏に4億4000万ポンドを投じてアレクサンデル・イサク、フロリアン・ヴィルツ、ウーゴ・エキティケらを獲得したが、いずれも期待に応えられていない。イサクはコンディションが整わず、ヴィルツはプレミアリーグの激しさに適応できていない。
アタッカー陣だけではなく、守備陣も不安定。昨季はリーグ全体で2失点しかしなかった速攻からの失点が、今季は開幕戦だけで2失点を記録した。チーム全体のバランスが崩れ、カウンターで無防備になるケースが頻発している。フィルジル・ファン・ダイクやイブラヒマ・コナテといった世界クラスの選手でさえ、致命的なミスを繰り返している。
スロット監督の雇用は現時点では安全とされているが、ファンからの圧力は日に日に高まっている。ブレントフォード戦ではホームサポーターから解任を求めるチャントが飛び出した。戦術的な硬直性も批判の的になっており、攻撃的なフットボールに固執するあまり、守備のバランスを犠牲にしているとの指摘がある。
今回の報道が真実であれば、リバプールにとっては大きすぎる追い風であり、是が非でもこの冬に獲得を試みるべきだろう。サラーの問題だけではなく、フェデリコ・キエーザら控えメンバーに信頼を置いているとは思えない状況を変えなければならない。
はたして、スロット監督はこの夏に続きボーンマスから主力を引き抜くのだろうか…?
