凍てつくようなミッドランズの風が吹き抜けるスタジアムの片隅で、一人の才能が静かにその熱を失おうとしている。リバプールからローン移籍した22歳MFハーヴェイ・エリオット。かつてアンフィールドの観衆を熱狂させたあの鮮やかな左足は、今やアストン・ヴィラのベンチを温めるためだけに存在している。
若手の成長を促すための武者修行は時に残酷なまでのミスマッチを生む。リバプールが良かれと思って送り出したこの移籍は、結果としてキャリアを泥沼に引きずり込むことになった。今シーズンここまでの出場数はわずか5試合と、ウナイ・エメリ監督はまるで忘れているかのように起用してない。
それに伴い、今回のローン移籍に含まれてた完全移籍への道は閉ざされた。トリガー条件となる10試合出場を達成する見込みはほぼゼロになっており、この冬にはリバプールへの復帰が頻繁に報じられてきた。
ピッチ上の全選手に対して機械のような正確さと守備時の献身性を求めるチームにおいて、自由な発想でライン間に顔を出し、創造性を爆発させるエリオットのプレースタイルがハマっていない。完全移籍を避ける意味合いも含まれているはずだ。
ウナイ・エメリという指揮官は、特に中盤の両翼や攻撃的ミッドフィルダーのポジションには、戦術的な規律を完遂する能力を最優先で要求する傾向が強い。現在のチームにおいて、他のプレーヤーの方が自身の戦術的要求をより高い精度で遂行していると断言しており、若きレフティーに割く時間は一秒たりとも残されていない。
本来、移籍金3500万ポンドという買い取りオプションが付随した今回のローン移籍は、両クラブにとって “Win-Win” にはずだった。しかし、試合に出場することすら許されない今の環境では、その金額設定そのものが無意味な数字の羅列へと成り下がっている。
普通であれば、すぐにでもリバプールに呼び戻せば良さそうな話だが、契約内容に不備があったと、海外メディア『Transfer DealSheet』が伝えた。それはリバプール側に、出場機会が得られない場合に選手を強制的に呼び戻すリコール条項が設定されていないようだ。
つまり、リバプールがどれほど現状を憂慮し、アンフィールドに連れ戻そうと画策しても、アストン・ヴィラ側が同意しない限り一方的に契約を打ち切ることは不可能。さらに、早期の契約解除を望む場合には、アストン・ヴィラ側が解約金を支払う必要があるという歪な構造になっているというのだ。
また、FIFAの登録規定もエリオットの行く手を阻む大きな壁として立ちはだかる。今シーズン、彼はすでにリバプールとアストン・ヴィラの2クラブで公式戦に出場済み。同一シーズン内に3つ目のクラブでプレーすることは規則で禁じられているため、残された道は、アストン・ヴィラのベンチで腐るか、リバプールに戻って限られた序列の中で戦うかの二択しかない。
アストン・ヴィラはからすれば、戦力として計算していない選手を手放したく、無駄な費用が発生します恐れがある。一方、リバプールにとってもヴィラ側との話し合いは避けられず、両者間での交渉が実施されることになるだろう。
はたして、元イングランドU-21代表ミッドフィルダーは、今シーズンの後半戦をヴィラで過ごすのか、もしくはアンフィールドに復帰するのだろうか…?
