2012/13シーズンの途中にリバプールへと加入したフィリペ・コウチーニョは、瞬く間に攻撃の中心を担い、愛称リトル・マジシャンの名に恥じない魔法のパスを繰り出し、ピンチを幾度となく救った。そんな彼がバルセロナ移籍志願したのが、2018年。約5年間のアンフィールドでの生活に終止符を打ち、スペインへと新天地を求めた。
シーズンの始まりこそ期待に見合ったパフォーマンスを披露していたが、徐々に出場機会を失っていく。ルイス・スアレスとリオネル・メッシとうまく共存できずに、ベンチ要員に格下げ。出番を求めて、2019/20シーズンはブンデスリーガ王者バイエルン・ミュンヘンへとレンタル。合計38試合に出場し、11ゴール9得点と復活を予感させた。
皮肉にも、バイエルン・ミュンヘンでのローン移籍期間に、チャンピオンズリーグ制覇を成し遂げた。ヨーロッパの頂点に立つために、バルセロナへと移籍したはずであったが、2019年には古巣リバプールがヨーロッパ王者に輝き、翌年にはバイエルン。コウチーニョ自身は優勝を経験したわけだが、バルセロナはローマとリバプールに2年連続大逆転を許すなど、ヨーロッパではパッとしない成績を繰り返した。
兼ねてからブラジル代表MFには移籍の噂が付き纏う。リバプールを含め、プレミアリーグへの復帰が毎年報じられている。そして、冬の移籍市場がまもなく開かれるため、移籍のニュースが報道された。今回は実力不足による売却ではなく、金銭的な理由で放出を迫られているという内容が、これまでものと少し異なる。
新型コロナの影響は、バルセロナも例外ではなく、収入面に影を落とす。加えて、リバプールからの移籍に際して、試合出場数による追加の移籍金に関する条項の存在が、ブラジル代表の放出へと駆り立てる。コウチーニョがバルセロナで100試合に出場した場合、1800万ポンド(約25.2億円)の支払い義務が発生してしまうのだ。
今シーズンは新監督ロナルド・クーマンの信頼を得て、開幕から主力として扱われている。チームはなかなか調子が上がらないものの、ここまでチャンピオンズリーグ含め13試合に出場しており、100試合まで残り10試合に迫っている。
パンデミックによる収入源のインパクトは大きく、少しでも出費を抑えたいバルセロナは、追加支払義務が発生する前に、選手売却を希望している。莫大な移籍金で獲得した選手だけに、格安な金額での移籍を拒んだ結果、買い手が見つからず、ローン移籍に落ち着いた過去があるだけに、完全移籍に向けて、大幅な値引きが要求されるだろう。
それはバルセロナも理解しており、4500万ポンド(約63億円)での移籍を容認する方針。ただ、コロナの影響を受けているのは、他のクラブも同じこと。プレミアリーグが放映権の関係上、収入は安定しているが、4500万ポンドは大金であり、容易に支払える金額ではない。
移籍先の候補は、必然的にイングランドになるだろう。ライバルであるレアル・マドリードに移籍するわけもなく、バイエルンという選択肢も閉ざされている。古巣リバプールも今夏は積極的に選手を獲得しており、今冬はセンターバックにお金を費やすはず。残る可能性は、チェルシーやマンチェスター勢、トッテナム、アーセナルあたり…攻撃が低調なアーセナルは喉から手が出るほど欲しいタイプの選手かもしれない。(その前に、メスト・エジルを売却しないといけないが…)
PSG(パリ・サンジェルマン)も可能性のひとつ。親友ネイマールが在籍しており、相性は抜群。他には中国やアラブ勢なども資金に余裕があるが、このタイミングでフィリペ・コウチーニョがアジアへの移籍を希望すると考えにくい。
バルセロナ残留か、強豪クラブへの完全移籍か。リバプールへの移籍はほぼ考えられないが、他のクラブでリバプール時代の活躍を取り戻し、サッカーを楽しむコウチーニョをふたたび観たい…