ユーロ2016…ポルトガル代表の躍進の中心に、レナト・サンチェスがいた。若干18歳ながら代表に選出されると、準々決勝でポーランド代表相手に同点弾を叩き込むなどチームの主力のひとりとして躍動。まさにブレイクを果たした大会となり、ユーロ2016後にはドイツの強豪バイエルン・ミュンヘンへの移籍が決定した。
しかし、この移籍を境にキャリアは下降線を描くこととなる。ブンデスリーガに馴染めず、バイエルン・ミュンヘンに在籍するスター選手たちとの競争にも打ち勝てず、ベンチを温める日々が続いた。当時プレミアリーグに所属していたスウォンジー・シティへのローン移籍もなんら助けにならず、2019年にリーグ・アンのLOSCリール・メトロポールへと放出された。
リーグ戦で現在3位に付けるクラブの原動力となっている元ポルトガル代表MF。リバプールとレナト・サンチェスとの関係が報じられたのが、昨年末。今年冬の移籍市場での獲得が伝えられていたものの、ユルゲン・クロップ監督は積極的な補強を否定し、最優先ではない中盤選手のため、単なるゴシップ扱いで流れるかに思えた。
移籍市場に精通するスポーツジャーナリストであるファブリツィオ・ロマーノによれば、リバプールは継続的に動向を追っており、今年の夏に本格的なオファーを提示する可能性があるようだ。ドイツメディアからはオランダ代表の英雄クラレンス・セードルフとも比較されるかつての逸材だが、23歳と老け込む年齢ではなく、まだまだ成長の余地は大幅に残されている。
リールで復活の兆しを見せており、実力はすでにヨーロッパの舞台で証明済み。大きな大会での勝負強さも見せつけており、ポテンシャルはいまだに巨大だ。豊富な運動量でピッチ全体を躍動的に走り回り、攻撃や守備の両面で力を発揮できる。短期間ではあるが、プレミアリーグでの経験があることもプラスに働きそうである。
人員が充足している印象もあるリバプールの中盤に、補強の噂が立ち込めるのは、ジョルジニオ・ワイナルドゥムの契約延長に決着が付いていないため。会長選挙を控えるバルセロナからの関心が今夏より報じられているが、新会長次第ではロナルド・クーマン監督がその職を追われるかしれず、フリー移籍が消滅する可能性もある。
リバプールとユルゲン・クロップ監督は残留を強く望んでいる。しかし、給与や契約年数に加えて、憧れのバルセロナへの移籍が目前に迫っていることもあり、決断を下せずにいるように思う。最低でも新会長が決まるまでは、この問題にかたがつくことは望めないだろう。会長選挙は1月24日に予定されている。
退団の確率も高まる中で、後釜の確保はクラブとしては優先しなければならず、たしかにレナト・サンチェスであれば、オランダ代表MFと同様の仕事ができる。ナビ・ケイタやアレックス・オックスレイド=チェンバレンらは攻撃志向が強く、カーティス・ジョーンズも守備面での改善は必須。
ファビーニョは守備型で、チアゴ・アルカンタラは対人守備には不安が残る。身体を張った守備をしつつも、攻撃に転じれる選手でいえば、ジョルジニオ・ワイナルドゥムを除くと、ジョーダン・ヘンダーソンとジェームズ・ミルナーのみ。ワイナルドゥムの退団は、ゲーゲンプレッシングにとっては大きな損失であり、戦力レベルを保つために、レナト・サンチェスは面白い。
ただし、新型コロナのパンデミックにより劇的に収入が減っているだけに、選手の売却なくしては補強は敢行できない。さらに言えば、最優先はセンターバックという事実を考えると、どれほどの移籍金を回せるかは不透明。
近年では、ニコラ・ペペ(アーセナル)やヴィクター・オシムヘン(ナポリ)と多額の移籍金を有するビジネスを成功させているリールだけに、法外な移籍金を要求されない保証もない。まして、クラブ史上最高額でリーグ・アンのクラブに移籍しているだけに、交渉は難しいものにはなりそうだ。それでも、リールも財政的には影響を受けており、安価での放出も検討しなければいけない可能性もゼロではない。
元ポルトガルのゴールデンルーキーは赤いユニフォームに袖を通し、アンフィールドでプレーする日が来るのだろうか。先が見えないワイナルドゥム契約延長問題とともに、進捗を慎重に追っていきたい…