サウサンプトンへのローン移籍ですぐに結果を出した南野拓実。チーム状況が芳しくない中で、試合を通しての活躍は難しいものの、ゴールを奪ったという事実は大きなインパクトを与えた。とくにトーマス・トゥヘル監督就任直後から堅守を継続するチェルシー相手に奪取したゴールは、南野のうまさを象徴するものであった。そして、チームのプレイスタイルも合致しており、今後の活躍にも期待が持てる。
スイス代表のエースであるシェルダン・シャキリも、復調の兆しを見せるシーズンを送っている。リバプール加入初年度こそ、ジョーカーとして貴重な得点やアシストで勝利に貢献し続けたが、翌年は度重なる怪我でシーズンを棒に振った。ディオゴ・ジョッタの加入で出場機会こそ減っているが、怪我の数が減り、シーズン通してコンディションを維持。序盤戦でジョッタのゴールをアシストするなど、本来の姿が戻りつつある。
しかし、両選手ともリバプールでは期待を超えられていないのが現実。シーズン前半戦こそ中盤などでの起用で、守備への貢献が評価された南野だが、肝心の攻撃ではフロントスリーにハマらず、能力の違いを露呈している。シャキリも時折良いパフォーマンス見せるが、継続性に欠き、序列は下がる一方である。
そんな2選手に対して、前線強化を狙っているセビージャが獲得を検討しているようだ。ヨーロッパリーグでは圧倒的な強さを見せるが、リーグではレアル・マドリード、バルセロナ、アトレティコ・マドリードの3強に食い込めていない。4強時代を迎えるためにも、潤沢な戦力を整えて、トップ3に対抗できるようなチーム作りをするためにも、リバプールで当落線上にいる選手に照準を定めている。
スペイン紙『La Razon』によれば、セビージャはシャキリには1290万ポンド(約18億円)、南野には850万ポンド(約11.9億円)とそれぞれ移籍金を準備している。ともに安い印象を受けるが、パンデミックの影響ですべてのクラブの財政が悪化しており、妥当な金額と言えなくもない。
リバプールも、退団濃厚なオランダ代表MFジョルジニオ・ワイナルドゥムの後釜を筆頭に、センターバックやフロントスリーのバックアップ強化に向けて、新たな選手を獲得せねばらなずに、日本代表とスイス代表のエースを売却し、現金化する可能性も否定できない。シャキリに関しては、昨年夏から移籍の話が賑わっており、今夏での退団は半ば既定路線であろう。
他方、南野はまだチャンスがありそうだ。同じくプレミアリーグのサウサンプトンで結果を残し、リーグへの適応力を格段に高めることができれば、来シーズンの一員として残留できる確率もある。FWディボク・オリギも退団の可能性が高まっている中、ある程度計算できる選手を留めておく選択肢も検討しているはず。
日本代表MF南野拓実にとっては、まずイングランド南部で成績を残すこと。これに尽きる。ゴールはもちろん、試合内での影響力を向上させつつ、フィジカルバトルへの耐久性を改善しなければ、昨季のプレミアリーグ王者に留まることは叶わない。
違った角度で見れば、ラ・リーガでのプレーも見てみたい。よりテクニックに比重の高いリーグだけに、肉弾戦ゴリゴリのプレミアリーグとの比較で、南野が持つ強みに合うだろう。体を当てられて、ボールを奪えわれる場面も多く、スペインの方が快適にサッカーをプレーできるかもしれない。
果たして、セビージャは2枚獲りを現実にさせることができるのか…