欧州サッカーシーンが冬の過密日程へと突入しようとする中、クロアチアの港町リエカでは、火花散るような熱戦が繰り広げられていた。リエカ対ハイドゥク・スプリト。発炎筒の煙が視界を遮り、轟音のようなチャントが鼓膜を震わせるアドリア海ダービーだ。
この狂気とも呼べる空間に、マージーサイドから派遣された特命チームの姿があった。地元紙『Novi List』がスクープしたところによると、リバプールのスカウト陣は、この大一番でハイドゥク・スプリトの主軸を担う21歳のアメリカ人MFロカス・プクシュタスのパフォーマンスを詳細に分析していたようだ。
2026年の夏、つまり来シーズンの終わりを見据えたチーム強化を狙ったものであるという。アルネ・スロット体制において、ライアン・フラーフェンベルフやアレクシス・マック・アリスター、ドミニク・ソボスライらにかかる負担を少しでも軽減する目的が見え隠れする。
ロカス・プクシュタスという選手を語る上で、既存のミッドフィルダーの枠組みは邪魔になる。パサーでもなければ、純粋な潰し屋でもない。あえて形容するなら “神出鬼没の爆撃機”。2004年にアメリカに生まれ、リトアニア人の血を引き、バルセロナのアカデミーのトライアルをも経験した異色の経歴を持つ。
相手ゴールへ向かう圧倒的な推進力と、泥臭い仕事を90分間やり抜く献身性も兼ね備える。また、スカウト陣が彼に魅了される最大の要因は、その特異な得点感覚にある。通常、中盤の選手がボックス内へ侵入するタイミングは限られるものだが、プクシュタスにはその常識が通用しない。
リバプールの現有戦力を見渡せば、ボールを運び、ゲームを組み立てる能力において世界屈指と言える。しかし、クロスボールに対して強引に飛び込み、理不尽に点を奪うMFというタイプは欠如している。
攻守両面で高いインテンシティを維持できる21歳のミッドフィルダーは、アルネ・スロット監督とも相性は良さそう。ただし、クロアチアリーグからいきなりプレミアリーグは難易度が格段に異なり、すぐさま対応できる可能性は低い。
加えて、遠藤航やカーティス・ジョーンズ、トレイ・ナイオニらもベンチには控えており、いますぐに中盤強化に熱を上げる必要性はない。年齢的にも遠藤以外は10代後半〜20代中盤で構成されており、世代交代もまだ時期とは言えない。
リバプールのような名門クラブにおいて、21歳という年齢で即戦力になれない選手を確保するとも考えにくい。10代であれば将来を見据えた補強と銘を打てるものの、来年には22歳となるためその線も薄い。
現時点でリバプールがスカウティング以上の動きを見せるとは思えないが、プクシュタスはどのようなキャリアを歩むことになるのだろうか…?
