ボルシア・ドルトムントを率いて、一躍世界でもトップクラスの名将へと成長したユルゲン・クロップ監督。潤沢な資金を持たないドルトムントを少ない移籍金で有望な若手を獲得し、そのポテンシャルをフルに発揮させ、ドイツの王者バイエルン・ミュンヘンとも争えるクラブに育て上げた。
ドイツでの素晴らしい実績は、イングランドにも轟いていた。アレックス・ファーガソン監督が勇退して以来、軌道に乗り切れないマンチェスター・ユナイテッドも招聘を狙う中、前シーズン限りでドルトムントを勇退していたユルゲン・クロップのリバプール指揮官就任が2015年10月に発表された。
イングランドの古豪も前オーナー陣の負債から回復を目指し試行錯誤していた時期に、リバプール監督に就いたドイツ人指揮官だが、初年度にはリーグカップとヨーロッパリーグで決勝進出。翌シーズンには遠ざかっていたチャンピオンズリーグ出場権を獲得し、年々成績を高めていった。
さらにその翌シーズンにはチャンピオンズリーグ決勝に進出。レアル・マドリードに敗れたものの、翌年にはふたたび決勝にたどり着くと、クラブにとって6度目となるビッグイヤーを獲得し、2019/20シーズンには30年ぶりのイングランド王者へと導いた。
就任当初には、ルーカス・レイバやフィリペ・コウチーニョ、ロベルト・フィルミーノらブラジル人選手も多く在籍していた。英語に馴染みのない選手たちにとっては、早口で訛りの強い英語は聞き取るのに苦労する。
ドイツ語を母語とするクロップ監督は流暢な英語を話すものの、本人曰くまだ完璧ではない。ただし、周りの英国人のおかげで仕事に支障は生じていない事実を明かしながらも、ブラジル人選手たちにとって、前任のブレンダン・ロジャーズ監督の英語は、外国人にとってわかりにくかったかもしれないことを示唆している。
「私にとって、言葉は本当に大切なものなんだ。」
「誰にとっても同じように重要であるとは思っていないし、仕事をする上でのアプローチも違う。私は選手たちと話さずに仕事をすることはできないが、それは可能だとも思う。」
「私の英語は今もまだ完璧ではなく、就任した当時も言わずもがな。それでも、外国人の言葉をひとつひとつ拾って、頭の中でフレーズにしてくれる英国人の優しさのおかげで、最初の瞬間からうまくいったんだ。」
「(ブレンダン・)ロジャーズより私の英語を理解してくれているだろう。」
「(ブレンダン・)ロジャーズがアイルランド人だったからかもしれない。彼は本当に速く話すし、ブラジルの選手たちは(ブレンダン・)ロジャーズを理解するよりも私を理解してくれたと思う。」
Sky Sports
この手の話はサッカー界に限った話ではなく、日常生活でも出会う可能性がある出来事だ。英語を母語としていないクロップ監督の英語はどの世界の人にとってもわかりやすく、ジェームズ・ミルナーやアンディ・ロバートソンの話す英語よりも聞き取りやすいのは確かだ。
リバプールも土地柄的に訛りが強く、アクセントを理解するまでは時間がかかる。そうした中で、現地人でなくとも、流暢な英語を話し、強烈なアクセントを持たない人の英語は選手だけじゃなく、世界中のサポーターにとっても助かる…