リバプールが世界に誇る最強スリートップ…ブラジル代表FWロベルト・フィルミーノ、セネガル代表FWサディオ・マネ、エジプト代表FWモハメド・サラー。息の合ったコンビネーションに加え、飛び抜けた個々の能力によって、驚異的なペースで得点やアシストを重ねている。
しかし、最高のスリートップも永遠に世界最高ではいられない。3シーズン前にはチャンピオンズリーグ決勝に進出。惜しくもレアル・マドリードに敗れたが、ヨーロッパ最高の舞台へとチームを導いた。翌シーズンは、勝ち点1ポイント差に泣いたプレミアリーグから奮い立ち、昨年の悔しさを跳ね返し、6度目となるチャンピオンズリーグの中心になり、クラブワールドカップでも実力を証明した。
さらに昨シーズンは集大成。得点への嗅覚と勝負強さで、30年ぶりとなるプレミアリーグ制覇に大きく貢献。モハメド・サラーが加入して以来、世界最高峰の攻撃陣を形成し、称賛を欲しいままにしてきた世界最高峰のフロントスリーに解散の時期が迫っているのかもしれない。
①まもなく30歳という年齢
フィルミーノが1991年生まれ、サラーとマネが1992年生まれ。いずれも30歳の大台を目前にしており、今後の爆発的な成長は見込めない。肉体も衰える一方で、スピードタイプのサラーや身体のバネをフル活用するマネにとっては、老いは急激にパフォーマンスに影響する確率がある。
異例となった今シーズンもフル稼働しているフロントスリーだが、毎試合100%を出せなくなる時期も迫っている。また負傷もしやすくなるため、代表戦などとの兼ね合いも注意深く考えないといけない。現に、30歳となったジョーダン・ヘンダーソンは小さな負傷を繰り返しており、ジェームズ・ミルナーもプレー時間は制限されている。ジョルジニオ・ワイナルドゥムという例外もいるが…
とはいえ、あと2年くらいはトップレベルで、数多くの試合をこなせるだろう。市場価値という観点では、大金で売り捌けるラストチャンス。脂がのりきった、選手としてキャリアのピークを迎えており、補強の資金源にするという選択肢もある。
②マンネリ化
驚異的な変化がないからこそ、マンネリ化が強調されてしまう。能力やコンビーネーションは世界トップレベルではあるが、それぞれの役割や特徴には大きな変化は生じていない。右ウイングで幅を取ってボールを受けたサラーが中にカットインしてシュート。マネも左ウイングからの崩しで、バネの効いたシュートで得点を量産する。
そんな2選手の潤滑油であり、フィルミーノが中央でセンターバックを手玉に取る。基本的には2人を活かすことが仕事ではあるものの、自らもゴールに絡めるだけの得点嗅覚を備えている。ゴール前を固められてたときには、ポジションを下げて、中盤から試合を作る役割も担ってきた。
カウンター時には、サラーとマネが相手ゴール付近に駆け上がる。基本原則は、この3選手が固定されて以来、大きな変化はない。加えて、ライバルが現れていない。ディボク・オリギや南野拓実、シェルダン・シャキリは継続的なインパクトを残せず、才能の違いは見た目にも明らかである。
ディオゴ・ジョッタの加入でようやく解消されつつあるが、それでも能力だけで考えると、絶対的なスタメンにはなり得ない。大事な試合であれば、通常通り、”フィルミーノ – マネ – サラー”が前線を務める。今後の成長には期待大だが、現時点ではマンネリ化していると言っても、過言ではないはずだ。
③研究し尽くされた
フロントスリーだけの破壊力で相手を撃破できていた時代から、対戦相手の攻略法を破るためにも、リバプールの攻撃は進化し続けてきた。まずは、サイドバックの積極的な攻撃参加。ほとんどウイングの位置まで上がり、クロスを供給し続ける。トレント・アレクサンダー=アーノルドのクロスに、アンディ・ロバートソンがゴールを決めるシーンはまさに圧巻であった。
ともにアシストランキングで上位になるほど、アシストを決め続けてきたが、対戦相手も徐々に対応を見せる。すると、センターバックからのロングフィードで一発で試合展開を変える攻撃も織り交ぜるようになる。フィルジル・ファンダイクからのフィードは正確かつ鋭い弾道で前線に合わせられるため、相手にとっては驚異以外の何物でもない。
ただ、直近の試合ではサイドバックが駆け上がるスペースも、センターバックからの一発もスペースを封じられて、うまく展開できていない。ファンダイクの負傷の影響は多大だが、それ以上にリバプール攻略法が確立されてきた印象を受ける。スペースが見当たらないチーム対策として、獲得したチアゴ・アルカンタラも完璧にフィットしているとは言い難い。
そして、ゴールに最も近い位置でプレーするフロントスリーが変わらなければいけない時期が来ている。プレースタイルが研究され尽くしている以上、新たな攻撃パターンを編み出すか、フロントスリーが対策に負けないだけのプレーを披露するしか道はない。
ここまで説明してきた3点から、移籍市場に目を向けるのは必然だろう。フランス代表FWキリアン・エムバペやイングランド代表FWジェイドン・サンチョ…ノルウェー代表FWアーリング・ブラウト・ハーランドら新たな血を入れるのも面白い解決策になる。
ローン移籍先ブラックバーンで大爆発中のハーヴェイ・エリオットや、まもなく怪我から復帰するディオゴ・ジョッタが対抗馬として来シーズンも躍動してくれると信じているが、トップクラスのストライカーに目を向ける時が、近づいているのかもしれない。
ただし、リバプールも収入は激減。移籍金は限られており、大物を補強するには、現有戦力を売らなければいけない。始めに述べたとおり、前線3枚にとって高額の移籍金が稼げる最後のチャンスだ。
新型コロナの影響もあり、ネイマールバブルのような巨額な金額は望めないが、それでも多額の金額を積まないと獲得には至らないはずだ。モハメド・サラーやサディオ・マネ、ロベルト・フィルミーノを売却し、チームを再構築をそろそろ考えないといけない時期が来ている…と勝手に思っている。