昨年開催予定だったユーロ2020。新型コロナのパンデミックにより、ヨーロッパの国々はロックダウンを決行し、サッカー大会のみならず人が集まることすら禁止された。今ではマスク文化のない国々でもマスクが定着し、感染者数もピークから減少傾向に転じており、今年の開催が決定した。
ヨーロッパ各国で行われるグループステージにおいて、リバプールからも選手たちが招集されている。また以前リバプールに所属していたプレーヤーたちも多く参戦を予定しており、好きなナショナルチームを応援する以外でも楽しめそうだ。
イングランド代表として出場した親善試合で負傷してしまい、代表チームから離脱が確定したDFトレント・アレクサンダー=アーノルドはなんとも残念。また昨年に負った怪我の影響で大会に出れないイングランド代表DFジョー・ゴメスやオランダ代表DFフィルジル・ファンダイクもまた残念で仕方ない。
6つのグループに分かれて戦うグループリーグは、6月12日4:00(日本時間)トルコ代表とイタリア代表との試合で開幕を迎えるユーロ2020。各グループ上位2チームに加え、3位の中で成績の良い4チーム(グループABCD3位 / グループABC3位 / グループADEF3位 / グループDEF3位)を合わせて、ベスト16が決定する。
大会は1ヶ月間をかけて開催される。決勝戦は7月12日4:00(日本時間)キックオフ予定であり、ロンドン・ウェンブリーで雌雄が決する。どの国が大会を制するかは気がかりだが、グループリーグから目が離せない。そして、出場予定で現時点でリバプールに所属するプレーヤーたちは以下の通り;
グループA
スイス代表|FWシェルダン・シャキリ
リバプールでは決して満足のいくシーズンを送れたわけではない。今シーズンはリーグ戦14試合に出場したが、ほとんどが途中出場。怪我に泣いた昨年からの復活が期待され、リーグ前半戦では兆しを見せたものの、後半戦では出番にすら恵まれずにシーズンを終えた。
今夏での放出が既定路線であり、希望する移籍金を支払うクラブが現れるか、もしくはリバプールが移籍金を値下げできるかが勝負になる。それでもスイス代表ではエースとして攻撃を組み立て、ゴールを奪う役割を期待されている。
ゴリゴリな上半身とキレのあるドリブル突破、鋭いスルーパスを武器に代表チームを率いる。優勝候補にも挙がるイタリアとは実力差が大きいだけに、トルコやウェールズ相手にしっかりと勝ち点を獲得できるかが鍵になりそうだ。
ウェールズ代表|FWハリー・ウィルソン、DFネコ・ウィリアムズ
3年連続ローン移籍となったFWハリー・ウィルソンは、チャンピオンシップで37試合7ゴール12アシストを記録し、ウェールズ代表でも主軸を担う。ガレス・ベイルやアーロン・ラムジー、ジョー・アレンら黄金世代が終わりを迎えるなか、大会を通じてエースへの成長が求められる。
今夏には完全移籍での退団が濃厚で、リーズ・ユナイテッド含む複数クラブが興味を示している。一方で、DFネコ・ウィリアムズもスタメンとして活躍が期待される。右ウイングバックを務めており、不本意なシーズンを忘れるほど大爆発してもらいたい。
ウィリアムズもまたチームを去ると予想され、契約形態は1年間のレンタル移籍になる見込み。プレミアリーグやチャンピオンシップから関心が伝えられており、ユーロ2020で評価を高めたい。見事な活躍を見せれれば、来季以降もリバプール残留し、トレントからポジションを奪う日が来るかもしれない。
スイス代表同様に、イタリアが頭一歩抜け出ているグループだけに、ウェールズとトルコを加えた三つ巴の戦いとなる。スイスとの初戦で勝利を手に入れ勢いに乗れれば、ベスト4と大躍進を遂げた前回大会の再現も夢ではない。
トルコ代表|DFオザン・カバク
半年間(6月30日まで)のローン移籍の期間を残しているため、今回はリバプール所属として扱う。守備陣が緊急事態に陥った今年の冬に、急遽チームに加わった若きトルコ代表DF。加入後の数試合は不安定なプレーだったが、少しずつリバプールやプレミアリーグにも慣れ、安定したパフォーマンスを継続的に披露した。
落ち着いた対応に加えて、カバーリングやフィード能力にも優れている。イブラヒマ・コナテ獲得に成功したリバプールは買取オプション行使せず、同胞DFチャーラル・ソユンジュが所属するレスター・シティやニューカッスルが選手の動向を追っている。
ブンデスリーガから降格したシャルケからの退団は既定路線。ユーロ2020では印象的なプレーぶりを披露し、各クラブから好条件を引き出したい。スイスやウェールズ同様に、イタリアを除く三つ巴の戦いを勝ち抜き、ベスト16に歩みを進めたいところ。
グループC
オランダ代表|MFジョルジニオ・ワイナルドゥム
今シーズンも豊富な運動量と怪我しない身体で、クラブと代表チームでフル稼働したジニ・ワイナルドゥム。ゲーゲンプレスの担い手として中盤に欠かせない存在であり、オランダ代表ではトップ下を務めゴールに近いこともあり、見事なペースで得点を重ねている。
リバプールとは契約延長交渉がまとまらず、バルセロナ移籍が濃厚に思われたものの、最終的にはPSGと契約合意。2024年までの3年契約で新天地が決まった。なお、2021年6月30日までリバプールとの契約を残している。
グループCはオランダが頭ひとつ抜き出ており、グループ突破は確実。ディフェンスリーダーを失った影響がベスト16以降は出てきそうだが、 ウクライナやオーストリア、北マケドニア相手に勝ち点を落とすとは想像しにくい。
グループD
イングランド代表|MFジョーダン・ヘンダーソン
今季リーグ後半戦を負傷により棒に振ったリバプール・キャプテンだが、なんとか大会に間に合わせ、イングランド代表に選出された。リーダーシップや運動量、プレッシング、ポジショニングなど精神面とプレー面で高いレベルでこなせる貴重な戦力だ。
若手も多い選手を引き締めつつも、イングランド代表キャプテンでもあるハリー・ケインとともにチームを引っ張る存在。コンディションがどこまで戻っているかが気がかりではあるが、ユーロ2020ではいつものヘンダーソンを見せてくれることだろう。
クロアチアとスコットランドと侮れない相手との戦いが待ち受けるグループD。チェコも手強い相手であり、足元をすくわれる可能性も否めない。戦力だけ見ればタレントを揃えており、クロアチアとの初戦できっちりと勝ち点3を確保できれば、ベスト16以上の結果も期待できる。
スコットランド代表|DFアンディ・ロバートソン
ジニ・ワイナルドゥムと一緒に、今季のリバプールを支え続けた選手のひとり。疲れ知らずのアップダウンを左サイドで繰り返し、攻守にわたって効果的なパフォーマンスを披露する。リーグ戦38試合に出場し、スコットランド代表でも休みなく働き続けている。
代表ではキャプテンを務め、両者ともにディフェンダーでもミッドフィルダーでも稼働できるキーラン・ティアニー(アーセナル)とともにプレーする左サイドからの攻撃は、スコットランドの強みのひとつにもなっている。
同じ英国のイングランドが最大のライバルだが、戦力的にはクロアチアを倒し、グループ2位で突破を確実にしたい。ただし、チェコも同等レベルを有しており、全くもって簡単なグループではないことは明らかだ。
グループE
スペイン代表|MFチアゴ・アルカンタラ
プレミアリーグ初挑戦となった元バイエルンMFは、エバートン戦で受けた悪質なタックルの影響で前半戦をほとんど出番を得られずにベンチ外で過ごした。年初頃から試合に出るようになったが、真の実力を発揮し始めたのは、MFファビーニョが守備的MFにポジションを戻したタイミング。
守備の負担が減ったチアゴは、自慢の攻撃センスとトリッキーなパス、重心をずらすドリブルなど攻撃的能力をいかんなく発揮し、来シーズンに期待をもたせる内容でシーズンを終えた。スペイン代表でも中盤の欠かせない主軸としてパスを散らし続ける。
スウェーデン、ポーランド、スロバキアと戦力では劣るチーム相手に取りこぼしは許されない。ACミランで存在感を見せつけるズラタン・イブラヒモビッチを負傷で欠くスウェーデンとの大会初戦で勝利を掴めれば、ベスト16進出も問題なさそうである。
グループF
ポルトガル代表|FWディオゴ・ジョッタ
リバプール加入初年度にもかかわらず、すぐさまリバプールにフィットしたディオゴ・ジョッタ。フロントスリーとの相性も良く、負傷でいなくなった数ヶ月間は復帰が待ちきれないという声が続出するほどに、チーム成績も下降線を辿っていった。
今大会の優勝候補筆頭のポルトガルは、各ポジションにタレントを揃えている。クリスティアーノ・ロナウドも健在で、精神面でも代表を引っ張る。不運は強豪揃いのグループステージを勝ち進まないといけないこと。
ドイツとフランスが同グループにおり、ポルトガルにとっての初戦・ハンガリー戦で万が一にでも勝ち点を落とすと、一気に突破が難しくなる。ドイツ戦とフランス戦は激しい戦いが予想されるため、ハンガリー戦がその後の命運を握る。
以前リバプールに所属していた選手たちという意味では…クロアチア代表デヤン・ロブレン、ベルギー代表シモン・ミニュレ&クリスティアン・ベンテケら懐かしい名前が並んでおり、こちらはこちらで楽しみにしたい要因のひとつである。
ヨーロッパ各国を巻き込んで、1ヶ月にわたり熱戦が繰り広げられる。時差の関係で、深夜帯や早朝での試合も多く、眠れない日々が続きそうだが、ちゃんと体調を整えつつも観戦を楽しみたい…