カーティス・ジョーンズ:トクステスの少年がアンフィールドのピッチで輝きを放つまで

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カーティス・ジョーンズ:トクステスの少年がアンフィールドのピッチで輝きを放つまで キャリア

リバプール・トクステスに生まれたカーティス・ジョーンズは、真のスカウサーとして、地元の誇りとなっている。トクステスの路地裏から、アンフィールドのピッチ、そしてイングランド代表へと駆け上がったその軌跡を辿る。

トクステスでの幼少期

2001年1月30日、イングランド・マージーサイド州リバプールに生まれたカーティス・ジュリアン・ジョーンズ(Curtis Julian Jones)。ナイジェリア人の祖母がおり、ナイジェリアのルーツも持つ彼は、リバプールの下町トクステス地区で4人兄弟の末っ子として育った。

母親のサンドラは、幼いカーティスが抱いていたサッカーへの情熱を支え続け、トレーニングにも熱心に付き添いました。ナイジェリア系の父親についての情報は少ないものの、スカウスとアフリカの伝統を融合させるとともに、家族の支えが彼の成長に大きく貢献したことは想像しやすい。

セント・ビンセント・ド・ポール小学校に通っていた頃から、カーティスは典型的な “ストリートキッズ” だった。学校のフェンスを乗り越えて校庭に忍び込み、近所の路地で即席のゴールを作って夜遅くまでボールを蹴る毎日。決して恵まれた最高の環境とは言えなかったかもしれないが、幼いカーティスはその環境を最大限に活かした。

わずか5歳の頃から、生まれ持った卓越したバランス感覚、スピード、敏捷性を披露しており、学校のグラウンドでは誰をもドリブルで抜き去る姿が目立っていたとも。サッカーだけでなく、クリケットやバスケットボールなどあらゆるスポーツに長け、芸術や演劇、詩の朗読などの創造的活動でも才能を発揮する多才な少年だった。

周囲からの人気も高く、誰に対しても温かく接する彼の人柄は、多くの友達を惹きつけました。トクステスという地域で育った経験が、強いコミュニティ意識と家族の大切さを彼の中に植え付け、それが今日の彼の人格形成に大きく影響していると言っても過言ではない。いまやトップチームでも誰にでも気軽に話しかける様子からも、それが見て取れる。

9歳の時、学校の遠足中にリバプールのスカウトに見出された。驚くべきことに、彼はこの頃からすでに明確な目標を抱いていた。それは、バックアッププランは必要ない。プロフェッショナルのサッカー選手になること。そう断言していた才能に溢れる少年は、本拠地のアンフィールドでプレーし、イングランド代表としてウェンブリーで決勝ゴールを決める夢まで見ていた。

リバプール・アカデミーでの成長

9歳でリバプールのアカデミーに入団したカーティスは、その後急速にカテゴリーを駆け上がります。15歳でU-18チームに選出され、16歳でU23チームデビュー。凄まじいポテンシャルを発揮し、飛び級に次ぐ飛び級で、一躍次世代を担うタレントとして評価されると、2018年2月1日には、クラブと初のプロ契約を結んだ。

アカデミー時代、彼にとって最も大きな影響を与えたのは、当時U-18チームを指導していたスティーブン・ジェラードでした。地元クラブのスーパースターで、チャンピオンズリーグももたらした英雄の存在で、憧れの選手が自分のコーチとなったことで、選手としても人間としても大幅なステップアップを遂げた。元リバプールのキャプテンは彼の才能を磨くだけでなく、自制心や責任感を教え込みました。

年代が上のチームでプレーした後に自分の年代に戻ると、ボールをこねすぎたり、技術をひけらかしたりする傾向があったカーティス。ジェラードはそんな彼を正しい方向へ導き、トップチームで活躍するための土台を叩き込んだ。U-19とU-23チームの両方ではキャプテンを務め、若くしてリーダーシップを発揮するようになりました。

アカデミーディレクターのアレックス・イングルソープは、彼のプレースタイルから当時トップチームで躍進していたアダム・ララーナとサディオ・マネの要素を見出す。一方で、ボールコントロール、テクニック、ドリブル能力、左サイドに流れる傾向から、若き日のフィリペ・コウチーニョと比較する声も多く挙がっており、地元の選手にかかる期待は高まり続けた。

そんな折、プレシーズン中にユルゲン・クロップ監督は、機動力とドリブルスキルを高く評価。ただし、パスを出すタイミングの見極めや、ドリブルを単なる見せ場ではなく、状況を打開するための武器として使うことの重要性も強調した。1年間トップチームと共にトレーニングを重ねた彼は、一流の選手たちから多くのことを吸収。

ジェームズ・ミルナーは選手でありながらも、10代のカーティスにとっては良き指導者となりました。厳しい叱咤激励を通じて、大舞台での振る舞い方を教えた。ミルナーからの “試合のレベルが上がるにつれて、才能をひけらかすのはやめるべきだ” というアドバイスは、彼の目を覚させた。

契約更新の遅れや怪我による離脱など、困難な局面も経験。ローン移籍の誘いも断り、リバプールでの成長や成功にこだわった彼の決断は、後に大きな実を結ぶことになる。

プロとしてのブレイクスルー

カーティス・ジョーンズは、2019年1月7日のFAカップ、ウルヴァーハンプトン・ワンダラーズ戦でトップチームデビューを果たす。同シーズンのプレミアリーグ、ウェストハム・ユナイテッド戦でベンチ入りを飾るも、出番には恵まれず、そのままシーズンを終える。

翌シーズンには、数多くの試合で間近でプレーを見て、ピッチにも立った。2019年9月25日のEFLカップ、ミルトン・キーンズ・ドンズ戦ではプロとして2試合目にして早くもマン・オブ・ザ・マッチに選出される活躍を見せ、同年12月にはプレミアリーグ・ボーンマス戦で初めて国内リーグでの出番を得た。

そして2020年1月5日、彼のキャリアの転機となる瞬間が訪れる。FAカップの地元ダービー、エバートン戦。20ヤード外からの見事なカーリングシュートが沈め、決勝点を奪いチームを1-0で勝利に導いた。18歳340日での得点は、1994年のロビー・ファウラー以来となり、マージーサイド・ダービーにおける最年少得点記録を更新。この1発で、一夜にしてリバプールファンにとってのヒーローとなった。

その後もFAカップのシュルーズベリー・タウン戦で2試合連続ゴールを決め、10代での連続得点は2014年4月のラヒーム・スターリング以来の快挙。さらに19歳5日でFAカップのシュルーズベリー・タウンとの再試合において、リバプール史上最年少キャプテンとして若手チームを率いる大役も果たした。2020年7月には、バーンリー戦ではプレミアリーグで初の先発の座を掴んだ。

2020年7月4日にはクラブと新たな長期契約を締結し、翌日にはアストン・ビラ戦でプレミアリーグ初得点を記録。2020年7月22日、チェルシー戦での出場で公式戦5試合目となり、悲願のプレミアリーグ優勝メダル獲得の資格を得た。コロナ下でのセレモニーだけに特殊な優勝となったが、同選手にとっては感慨深いものになったことは間違いない。2019-20シーズンのプレミアリーグ2年間最優秀選手にも選出され、その才能が広く認められるようになった。

現在の活躍と将来性

2022年11月17日、リバプールと2027年6月までの長期契約を締結し、クラブへの長期的コミットメントを示した。怪我に苦しんだ時期もああったものの、2022-23シーズン後半には復調。トッテナムやレスター戦での得点など、印象的なパフォーマンスを見せ、レギュラーポジションを確保した。

当時ユルゲン・クロップ監督のもとで、アシスタントマネージャーを務めていたペピン・リンダースは、彼の復活を “スカ右サーのメンタリティ” によるものだと表現。地元出身者特有の粘り強さと情熱が、彼の回復の支えとなった。それ以降は、毎試合のようにスタメンでこそないが、チームにとって貴重な戦力として定着した。

2023年にはイングランドU-21代表としてUEFA U-21欧州選手権に出場し、同国の優勝に貢献。決勝のスペイン戦では決勝点となるゴールを決め、マン・オブ・ザ・マッチに選出されただけでなく、大会のベストイレブンにも名を連ねました。アンダーカテゴリーながらも、国際舞台で結果を残し、クラブでのプレーにも弾みを持たせた。

2023-24シーズンには順調なスタートを切ったが、10月と11月にはサスペンションと怪我により出場機会を失うことに。しかし、彼は “今はチームの一員であり、自分が何をすべきか分かっている” と自信を深め、EFLカップ準々決勝のウェストハム・ユナイテッド戦では2023-24シーズン初ゴールを記録した。

2024年5月、UEFA EURO2024の予備招集メンバーに選ばれるも最終メンバーからは漏れる。同年11月のUEFAネーションズリーグではついにフル代表デビューを飾る。ギリシャ戦では鮮やかなバックヒールで代表初ゴールも決め、その才能を代表戦でもまざまざと見せ付けた。2024年10月には父親となり、その責任からか、私生活での変化によってピッチでのコンディションも向上した。

2023-2024シーズンをもって、長年リバプールを率いてきたユルゲン・クロップ監督が退任。新たにアルネ・スロット監督が就任すると、守備的MF、中央MF、攻撃的MFと中盤における複数のポジションをこなせる万能性を発揮。

ハンガリー代表MFドミニク・ソボスライとの使い分けで過密日程を乗り切り、時にはオランダ代表MFライアン・フラーフェンベルフやアルゼンチン代表MFアレクシス・マック・アリスターらのポジションもこなし、基本的には彼ら4選手をローテーションしつつ、コンディションを維持してきた。

彼が有する大きな強みは、適応力、粘り強さ、ボール保持能力、プレス耐性、高いフットボールIQ、ユーティリティ性など多岐方面に渡る。プレミアリーグにおいても高いパス成功率を誇り、中盤での安定したボール回しに貢献。中盤のダイナモとして中盤にエネルギーをもたらせる。元リバプールMFジョーダン・ヘンダーソンのような献身性も魅力的だ。

一方で、プログレッシブパス(攻撃を前進させるパス)やファイナルサードへのパスは多いものの、ペナルティエリア内へのパスやキーパス、アシストに直結するような局面での貢献はまだ改善の余地がある。中盤でのつなぎ役として機能しており、直接的なチャンスメイカーというよりは攻撃の土台を作る役割が適している。

サポーターの間では評価が分かれることもある。バックパスが目立つ試合も多く、フラーフェンベルフのようなボール運び、マック・アリスターのように厳しい局面でも前にパスを出す能力と比較されると、どうしてもマイナスな印象を抱いてしまうサポーターがいても不思議はない。

全員が試合最後まで走り切りことが求められる現代フットボールにおいて、彼の才能とも言えるボール保持能力やプレス耐性は、極めて価値の高いスキルセットだ。他のミッドフィルダーと比較した際の一貫性や攻撃への直接的貢献度をめぐって議論はあるものの、まだ24歳という若さを考えれば、今後の成長の余地は十分にあり得る。

今シーズンはチームの主軸としてプレミアリーグのタイトル獲得に貢献。若手選手だった頃の5年前とは異なり、様々な試合で勝利を収めるために働いた。今後はさらに出番を増やし、ライバルのミッドフィルダー陣との競争を勝ち抜き、絶対的レギュラーとして国内タイトルを勝ち得るのが優先課題となりそうだ。

これまでに彼が獲得したタイトルは、プレミアリーグ(2019-20、2024-25)、FAカップ(2021-22)、FAコミュニティ・シールド(2022)、FIFAクラブ・ワールドカップ(2019)と輝かしい。EFLカップ(2024-25)とチャンピオンズリーグ(2021-22)では準優勝の経験もあり、さらなるトロフィーの確保も狙える。

地元への貢献

トレント・アレクサンダー=アーノルドのレアル・マドリード行きによって、来シーズンにおいてはトップチームで唯一のスカウサーになり得るイングランド代表MF。コナー・ブラッドリーやハーヴェイ・エリオットら以外にも、トレイ・ナイオニやリオ・ングモハなどアカデミー出身の有望株が頭角を表しているものの、地元出身選手ではなく、地元の期待を一心に背負うプレーヤーになる。

出身校であるセント・ビンセント・ド・ポール小学校への恩返しも忘れていない。子どもたちが手作りのゴールで遊んでいる様子を見て、スポーツ用品を寄付。学校を訪問して生徒たちとも交流し、Q&Aセッションを設けるなど、コミュニティとのつながりを維持している。学校の教職員も彼がアンフィールドで活躍することに誇りを持っており、生徒たちにとって彼は大きなインスピレーションとなっている。

キャリアスター候補生
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