アンフィールドのピッチで、かつて背番号19が躍動した姿を思い出すのはそう難しくない。左足から放たれる精密なパス、そして狭いスペースを独力で切り裂く創造性は、ユルゲン・クロップ政権下でのリバプールに新たな彩りを加えていた。
しかし、フットボールの世界は非情であり、時計の針が止まることはない。今、マージーサイドの地で一つの時代の終わりが告げられようとしている。今季アストン・ヴィラにローン移籍中の22歳MFハーヴェイ・エリオットの去就が、かつてないほど騒がしくなっている。
アルネ・スロット監督率いるリバプールにおいて、元イングランドU-21代表MFの立場は劇的に変化した。スーパーサブとしての役割や中盤のインサイドハーフとして一定の出場機会を得ていたものの、オランダ人指揮官のお眼鏡には敵わなかった。
結果として、プレー時間を求めてアストン・ヴィラに買取オプション付きのローン移籍で加入するも、ウナイ・エメリ監督からもベンチ外に追いやられており、想定して環境とはほど遠く、アンフィールド時代よりも冷遇されている。
盛んにリバプール復帰が噂されているが、スロット監督の構想には入っていないのは明白。英『TEAMtalk』が報じたところによれば、エリオットは戦術プランから完全に外れており、来年の夏の移籍市場で売却する意思を固めたようだ。
かつてはモハメド・サラーの後継者とも謳われた逸材だが、クロップ時代にはウィンガーほどのスピードを持ち合わせていないことで中盤にコンバートされた。インサイドMFとして機能しており、イングランド代表のアンダーカテゴリーではその才能を遺憾無く発揮してきた。
フル代表デビューこそ飾っていないが、彼の持つポテンシャルは誰の目にも明らかだが、いま彼に必要なのは信頼を寄せる指揮官の存在だろう。継続的にピッチに立ち続けることで、自信を取り戻し、攻撃的ミッドフィルダーとして確立したいところ。
ヴィラでの境遇に関係なく、スロット監督である限りはリバプールで居場所がなさそうなエリオット。わずか15歳や16歳で彗星の如く現れたかつての神童には、クリスタル・パレスと古巣であるフラムが関心を示しているとも、同メディアが報じている。
フラムは以前から動向を熱心に追っており、ふたたび白いシャツを身に纏ったエリオットが、ロンドンの地で輝きを取り戻す姿を熱望している。子供の頃から育った環境に身を置くことで、感覚を取り戻せるメリットもある。
また、同じロンドンに本拠地を置くクリスタル・パレスも獲得に強い関心を示している。クリスタル・パレスは近年、若くて攻撃的な才能をチームの中心に据える補強戦略を成功させており、エベレチ・エゼやマイケル・オリーセといった選手たちの系譜を継ぐ存在として、エリオットはまさに理想的なプロフィールを備えている。
現時点では具体的な動きは見られない。それもそのはずで、すでに2つのクラブでプレーしており、エリオットはリバプールとヴィラ以外のクラブに移籍したとしても出場が許されず、今シーズンが終わるまではマージーサイドかバーミンガムのどちらかしか選択できない。
そのため、関心を示すクラブが動き出すのは早くとも2026年の夏。ふたたび輝きを取り戻すための時間は残されており、他クラブでの実績を提げて、子供の頃から応援するリバプールに舞い戻るストーリーも見てみたい…
