スペイン代表MFチアゴ・アルカンタラの移籍に関わるリバプールとバイエルン・ミュンヘンとのクラブ間合意のニュースが世界を駆け巡っている。世界屈指の創造性に溢れる選手の獲得を決めたかと思った矢先、スカウトチームの動きは別の選手に向かっている。
その選手とは、プレミアリーグから降格したワトフォードに所属するイスマイラ・サール。加入1年目となった昨シーズンは全コンペティションを通じて6ゴール6アシストを記録。リバプールファンにとって最も印象的なのは、無敗で迎えたワトフォード戦で2得点1アシストで大活躍し、リバプールに土をつけたパフォーマンスだろう。セネガル代表ではサディオ・マネと同僚で、代表デビュー以来3ゴールを決めている。
主戦場は右ウイングで、スピードを活かしたプレースタイルで相手ディフェンスを切り裂く。カウンターを強みに持つリバプールにとっては、効果的な補強となる。ただ、守備面での改善は必須だろう。対応が軽く、簡単にドリブル突破やパスを許してしまう場面も多々あり、粘り強さとポジショニング、攻守の切り替えスピードなど多方面での成長が期待される。同郷のサディオ・マネが最高のお手本として導いてくれるはずだ。
具体的なオファー提示はまだないようだが、問い合わせは済ましている。ワトフォードも売却には前向きで、3600万ポンド(約50億円)〜4500万ポンド(約63億円)程度のオファーであれば移籍を容認する構えだ。ただ、3000万ポンド(約42億円)で獲得したセネガル代表を格安で手放すつもりはなく、適切な移籍金が最低条件となる。
財務状況が芳しくないリバプールにとって、最大4500万ポンドの費用は看過できない。チアゴ・アルカンタラにも2000万ポンド(28億円)を支払うこともあり、選手の放出は避けられない。
前線の選手でいえば、ディボク・オリギやリアン・ブリュースター、シェルダン・シャキリ、ハリー・ウィルソンが放出候補となる。ウェールズ代表ハリー・ウィルソンの退団はほぼ既定路線。いずれの選手も移籍先には困らないため、クロップ監督の判断次第になる。リアン・ブリュースター以外は完全移籍が濃厚だ。
中盤に目を移すと、マルコ・グルイッチが放出候補筆頭。ヘルタ・ベルリンで2シーズンをローンで過ごしたセルビア代表MFは、ドイツクラブへの完全移籍が噂されている。考えたくはないが、ジョルジニオ・ワイナルドゥムも移籍の可能性はある。契約延長合意が急がれるものの、合意には至っておらず、チアゴを逃したバルセロナが本腰を入れるかもしれない。
守備陣で言えば、ロリス・カリウスとナサニエル・フィリップス。ロリス・カリウスがチャンピオンズ決勝の悪夢から本調子に戻らず、ドイツへの帰還が報道されている。中位〜下位クラブにとっては、まだまだ有益な補強となるはずだ。23歳になったナサニエル・フィリップスは、さすがに潮時。これ以上の成長は見込めず、有望な若手が勢揃いしており、退団は決定事項だろう。
こうした選手たちを放出し、しっかりと資金を得られる目処が立てば、イスマイラ・サール獲得が現実味を帯びてくる。サディオ・マネやモハメド・サラーのバックアップとして期待される快足ウィンガーは、来シーズン何色のユニフォームを着ているのだろうか。
一部報道では、マンチェスター・ユナイテッドがジェイドン・サンチョ獲得を逃した際の代替候補として去就を注視しているらしい。評価額が異常に高いサンチョよりも現実的な選択肢であるが、ウィンガータイプの選手はすでに複数在籍しており、わざわざサールに目を向ける可能性は限りなく低い。
同郷のマネが在籍しているのは大きなメリットになり、戦術にもフィットしそうな雰囲気が漂う。高いポテンシャルも感じられ、ハーヴェイ・エリオットあたりと切磋琢磨し、将来のリバプールを担ってくれる存在にもなり得るだろう。