短期的な契約延長の末、今シーズン限りでの退団が発表されたアダム・ララーナ。サウサンプトンからの移籍以来、左右のウイングや中盤でテクニカルで運動量豊富なプレースタイルで、主力として、近年は貴重なバックアッパーとしてチームへ貢献を惜しまなかった。
ファンから愛される選手の退団は、純粋に悲しい。さらには、ゲーゲンプレスを信条とするプレースタイルのリバプールにとって、複数のポジションをこなせて、臆せず走りきれる選手を失うことは、選手層の面でも大きな痛手である。
トッド・カントウェルという選択肢
同じくウイングや中盤でプレーできるチェンボやケイタ、ミルナーと陣容は盤石に見える。だが、チェンボやケイタが100%力を発揮しているとは言い難い状況であり、衰えを感じさせないミルナーでさえ、常にコンディションを保つのは厳しいだろう。
スタメン組のヘンダーソンやワイナルドゥムも30歳を迎え、ファビーニョも昨年末の負傷から完全復活への道半ば。カーティス・ジョーンズも外せないが、FAカップでのプレーを見ている限り、適切なポジションは左ウイングのように思える。
中盤の選手層に厚みをもたらし、クロップサッカーを体現する中盤の戦士として、ノリッジ所属「トッド・カントウェル」をオススメしたい。今期ブレイクしたカントウェル、中断前の段階で、29試合(6ゴール2アシスト)に出場し、最下位に沈むチームにいながら印象的な活躍を見せている。
カントウェルがふさわしい、これだけの理由
ララーナと近いプレースタイル
ララーナとカントウェルは共に、独特な間合いでのドリブルを得意とし、チームに前線への推進力を与える。今期前半戦でゴールを量産したテーム・プッキとの連携で、前線に飛び出し、相手チームのゴールに迫るシーンを多く作り出している。
また、運動量や献身性も魅力的だ。攻撃が好きなことは否めないが、守備の局面でもしっかりとポジションに戻り、相手に食らえつく。線が細く、当たりは弱い。それでも、負けん気の強さを発揮し、相手に仕事をさせない姿勢はクロップにも好印象を与えるはずだ。
22歳と若く、フィジカルの向上は十分に見込める。適切なポジショニングや連動性をクロップ監督の下で学び、持ち前の前線への推進力で、カウンターにおいても存在感を発揮できるだけのポテンシャルを備えている。
イングランド人であること
プレミアリーグはイングランド国内選手の競争力を高める意味合いで、ホームグロウン制度を採用している。ホームグロウンとして登録できる選手は、21歳の誕生日を迎えたシーズンの終了までに渡りイングランド(ウェールズ)のクラブに在籍していた選手に与えられる。25名まで登録できるトップチームのうち、8名はホームグロウン選手を入れなければならない。
ノリッジアカデミー生え抜きのカントウェルは、無論ホームグロウン選手。ヘンダーソンやミルナー、ゴメス、トレント、ハーヴェイ、カーティスなど十分な人数を有しているため、そこまで気にするべきことではないかもしれないが、該当する有能な選手を確保しておくことはやぶさかではない。
デメリットとして、近年のプレミアリーグでは、貴重なイングランド選手であることを理由に、移籍金が吊り上げられている。マンチェスターUに移籍したハリー・マグワイアは事実、フィルジル・ファン・ダイクよりも高額な金額で移籍している。
移籍金が抑えられる
リバプールが長年追い求めるティモ・ヴェルナーやカイ・ハフェルツに比べると、移籍金が圧倒的に安い。€20mと見積もられるカントウェルの移籍金は、€64mやそれ以上とも言われるヴェルナーの移籍金との単純比較で、たった3分の1。
ノリッジの降格が決まれば、さらに移籍金を下げる交渉がしやすくなる。アンディ・ロバートソンがハル・シティで降格後、格安でリバプールに移籍したパターンに似ている。
すぐにヘンダーソンやワイナルドゥムを脅かす存在にはなり得ない。直近は貴重な控えとして、またララーナ退団で失うドリブル突破や中盤とフロントスリーとのリンクマンとして、加えて未来への投資の意味も含めて、お買い得な買い物になるだろう。
他の選手同様、時間をかけてリバプールサッカーへの適用を試み、次世代リバプールの一員になれる逸材であると信じて疑わない。