地元ASローマ・ユース出身の元イタリア代表MFアルベルト・アクィラーニ。ローマでは149試合に出場し、そのまま地元クラブで生涯を終えるかに思えた。しかし、当時リバプールを率いていたラファ・ベニテス監督に請われ、2009年の夏にリバプール移籍を果たした。
ただし、チーム状況は最悪。オーナー陣の不仲に加えて、成績も上がらない中での加入は、順風満帆とは行かなかった。また、アクィラーニ自身も負傷の影響で試合数は限られ、活躍する場面は限定的。
後任を受け継いだロイ・ホジソンからは信頼を得られずに、ユベントスやACミランへのレンタル移籍を経験。2012年にはフィオレンティーナに放出された元イタリア代表MFは、リバプール移籍の真相を『the ECHO』との単独インタビューで振り返った。
「リバプール移籍は、僕にとって大きな変化だった。」
「ローマで生まれ、ローマでプレー。ローマのサポーターでもある私にとって、ローマを離れることはとても難しいことでした。」
「若い頃には、ローマから移籍するチャンスは何度もあった。アーセナルやチェルシーからのオファーにも、ローマを離れる可能性は全くなかったよ。」
「何が起こったかというと、大きなケガを負ってしまった。状況は改善せず、手術が必要になり、4〜5ヶ月間休養を余儀なくされた。」
「代理人からリバプールが僕を欲しがっていると聞いたとき、以前のアーセナルやチェルシー、ユベントスからのオファーと同様に、ローマは売らないだろうと高を括っていた。」
「しかし、代理人からローマが僕を売りたがっていると聞いたとき、異なる感情が沸き起こってきた。私にとって、ローマから他のクラブや他の国へ移ることは考えられなかったんだ。」
「それ(ローマの売却希望)が真実だと理解したとき、僕にとってはリバプールが最高の選択だった。」
ローマの売却希望に絶望しながらも、前向きにリバプールに新天地を求めたアルベルト・アクィラーニ。当時を振り返り、プレミアリーグやリバプールへの憧れや、神様とまで讃える元イングランド代表MFスティーブン・ジェラードと同じクラブになったことへの喜びを語っている。
「(移籍は)夢のような話でした。」
「リバプールでは誰もが、ここはサッカーのパラダイスで、正しい決断だったと言っていました。」
「ビッグクラブだからこそ、ピッチや試合では集中しなければならない。ポジティブな気持ちでイングランドに渡り、ヨン・アルネ・リーセはリバプールについて話してくれたし、ラファ・ベニテスとも何度も話したよ。」
「イングランド・サッカーは好きで、リバプールのプレースタイルやファン、そして選手たちも大好き。スティーブン・ジェラードは僕のヒーローだったし、彼と一緒にプレーできることは大きなチャンスだった。」
「多くの試合を観戦したけど、そこにはスティーブン・ジェラードがいた。僕にとって、ジェラードはサッカーの神様だ。少しだけ考えて、良いチャンスだと思ったんだ。」
移籍する前から怪我を患っていた同選手は、スタートダッシュに失敗。2009/2010シーズンの中盤から徐々に出番を確保し始めたが、プレミアリーグでのスタメンは9試合のみ。絶対的な存在に成りきれなかった。
リバプール移籍をポジティブに捉えていたが、怪我で試合に出られないもどかしい日々には気落ちしていたようだ。新しいクラブでの開幕ダッシュの重要性を、レアル・マドリードからパリ・サンジェルマンに移籍したものの、怪我のせいで試合に出れていない元スペイン代表DFセルヒオ・ラモスを例に説いている。
「最大の問題は、怪我が完治していなかったこと。」
「ラファ・ベニテスには、“ラファ、加入するのはすごく嬉しいけど、怪我をしている。”と伝えた。そしたら、“問題ない、5年契約を結ぼう。5ヶ月や5日ではなく、5年間で回復してくれ!”と言われた。」
「契約にはとても満足していた。でも、たくさんのお金が費やされ、僕はリバプールでビッグネーム扱いを受けた。高額での移籍だったこともあり、サポーターやジャーナリスト、報道関係者、誰もが僕に期待していた。」
「しかし、状況は芳しくなく、怪我の影響で5ヶ月間ベンチを温めた。大きな決断を伴う移籍で、新しいクラブに来たのに、プレーしないというのは、とっても難しいこと。プレーしたくないわけではなく、プレーできないのがもどかしい。」
「困難だったし、その年のチームの調子は良くなかった。チャンピオンズリーグからも脱落し、トップ4からも脱落。良い状況とは言えなかったね。」
「8月初旬に契約して、10月下旬までプレーできなかった。3ヶ月はほんとに長いよ。」
「(今夏)PSGに加入したセルヒオ・ラモスも同じ状況。入団したものの、怪我をしてしまった。彼にとっても、クラブにとってもフラストレーションが溜まる展開で、高い給料を受け取っているのに、プレーできない。ほんとにストレスが溜まる。」