フィルジル・ファンダイクの長期離脱に始まり、ジョー・ゴメスの長期離脱も確定したリバプール。ジョエル・マティプも序盤戦は負傷で離脱しており、ファビーニョもまた筋肉系のトラブルで3週間ほど試合から遠ざかっていた。
過密日程でセンターバック以外にも筋肉系にトラブルを抱える選手が続出し、危ないタックルで負傷した選手たち、さらには新型コロナでの隔離措置…リバプールは野戦病院と化している。そんな状況において、やはりディフェンスリーダー不在のセンターバックは補強ポイントにならなければいけない。
一部メディアでは今冬に補強は一切しないという報道も出ているが、デヤン・ロブレンを放出し、選手層に不安の残る守備陣に最低でも1人は加えないと、マティプやファビーニョにふたたび怪我が襲った時に、さらなる緊急事態に陥ってしまう。
獲得候補のニュースには事欠かない。毎日のように新たな選手が獲得候補として、メディアを賑わせている。即戦力になりそうな選手の他、移籍金が安価な選手、無所属で移籍金がかからないベテラン選手と様々なタイプが誌面に登場している。全員網羅は難しいが、7名に限定してご紹介していこう。
ダヨ・ウパメカノ(RBライプツィヒ)
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言わずと知れた人気銘柄。今夏にもビッグクラブがこぞって獲得を目指した逸材であり、まだ22歳と若さも魅力的。フランス代表としてもデビューを果たし、さらなる活躍に期待がもたれる。所属しているRBライプツィヒでは確固たる地位を築いており、ステップアップを目指し移籍も視野に入れる。
実力は折り紙付きで、ブンデスリーガでも最高ランクのセンターバック。プレミアリーグへの適応に時間がかかる可能性はあるものの、高い身体能力に加えて、巧みなボールコントロールやカバーリングスピード、前線へのフィードとあるゆる分野でトップクラスの能力を兼ね備えている。
移籍金は高額になると予想され、獲得レースの激化に伴い、異次元の値段に吊り上げられる可能性も否めない。今夏に補強した選手の移籍金を捻出できていないリバプールは、仮にダヨ・ウパメカノ獲得に動く場合は、数名の放出が必要となる。筆頭はディボク・オリギやシェルダン・シャキリになるだろう。
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ベン・ホワイト(ブライトン・アンド・ホーヴ・アルビオン)
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デヤン・ロブレンをゼニトへと放出した際に、盛んに取り上げられたイングランド期待の若手。昨シーズンはビエルサ監督率いるリーズ・ユナイテッドへローン移籍し、チャンピオンシップながらMVP級の働きを見せ、プレミアリーグ各クラブが獲得を狙っていた。
契約元のブライトン・アンド・ホーヴ・アルビオンは早々いかなる金額でも放出を考えていない姿勢を明言していたが、古巣リーズ・ユナイテッドやリバプールが関心を示し続けていた。イングランド国籍というプレミアム価格が上乗せになり、高額な移籍金が予測される。
インテリジェンスの高いスマートな現代的なセンターバックとして、プレミアリーグを舞台に10試合の出場機会を得ており、スタメンの座を確保している。スピードやポジショニング、パスやフィード能力も高く、トップレベルでの経験さえ身につければ大化けする選手である。
ベン・ホワイトも即戦力に位置付けられる。高いディフェンスラインを維持するリバプールにおいても、問題なく順応できるはず。しかし、今年の冬にブライトンが移籍を容認するとは到底思えず、2021年夏の移籍市場が現実的だろう。
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ペール・スフールス(アヤックス)
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移籍金と能力、ポテンシャルで最も可能性がある選手と言えば、フィルジル・ファンダイクと同郷のペール・スフールス。チャンピオンズリーグではグループステージで直接対決を演じており、ユルゲン・クロップ監督も自分の目で能力を確認している。
今シーズンから先発の座を掴んでおり、経験値の少なさが問題視されるが、高いポテンシャルを有している。ユベントス所属DFマタイス・デ・リフトを彷彿されるフィジカルの強さに、技術的にも優れ、現代のセンターバックに求められる要素を持ち合わせている。
ウパメカノ同様に、プレミアリーグへの適応も課題となる。即戦力候補としての獲得になるはずで、ひとまずは4番手としてリバプール生活をスタートさせることになる。とはいえ、ファンダイクとジョー・ゴメスが復帰するまでは、主力としてフル稼働が求められる。
ディオゴ・ジョッタにお金を費やし、新型コロナの影響も受ける財務状況だけに、ウパメカノやホワイトと比べるとお財布に優しい補強プランは、経営視点では魅力に溢れる。トップチームでシーズンを通してプレー経験がない事実が、スカウティングチームにどう映っているのだろうか?
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オザン・カバク(シャルケ)
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ジョエル・マティプの古巣シャルケで活躍を続けるオザン・カバクもまた、現実的な補強候補の1人だ。今夏にも少し話題に挙がったトルコ代表DFは、ステップアップのために移籍を望む確率は高いだろう。
対人にも強く、プレミアリーグへの適応度はペール・スフールスよりも高い。元々クロップ監督の親友で、過去にハダースフィールド・タウンを率いてプレミアリーグで対決したこともあるデイヴィッド・ワグナー監督がシャルケ監督だったこともあり、頻繁にニュースに取り上げられていた。
現時点でワグナー監督は解任されており、クロップ・コネクションは生かせないかも。ドイツなので、別ルートを持っている可能性も否定できないが、獲得の現実度は下がった。身長も低く、ゴメスみたく快足ではない。ヘディングが弱いわけではないが、平均身長が決して高くないリバプールだけに、高身長センターバックに心が動いている気がしないでもない。
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ダビド・アラバ(バイエルン・ミュンヘン)
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バイエルン・ミュンヘンを代表する選手であり、オーストリア代表でも縦横無尽に躍動しているのが、ダビド・アラバ。元々中盤の選手だったが、バイエルンではレフトバックにコンバートされてブレークし、アルフォンソ・デイビスが活躍し始めるとセンターバックへとコンバートされた。
ミッドフィルダー、レフトバック、センターバックと複数のポジションを高いレベルで完遂できる貴重な存在で、各クラブが喉から手が出るほどチームに加えたい完成された選手である。昨シーズンはチャンピオンズリーグ優勝に大きく貢献し、新たなチャレンジを求めているいう噂もちらほら。事実、クラブとの契約延長交渉は行き詰まっており、チェルシーなどが獲得に動いている。
間違いようなく、即戦力であり、容易にセンターバックの穴を埋めてくれるはずだ。他の選手に比べると給与は高そうだが、それに見合うだけの活躍は保証してくれる。まだ数試合しか出場できていないが、同じくバイエルンから加入したチアゴ・アルカンタラが短時間でもインパクトを残しており、同等のプレーぶりが期待できる。
ただ競争も激しく、来年にはフリーで獲得できることから、様子を見るクラブも多いかもしれない。プレミアリーグに、チアゴの存在、ユルゲン・クロップ監督と引きつける要素は満載だが、リバプールがチアゴに続いて将来性に乏しい選手の獲得に踏み切るかは微妙なところ。
短期的な即戦力よりも、10年単位でクラブを支えられるセンターバックを求めるリバプールにとっては、立て続けに刺激物となり得る大物を迎え入れる可能性は限りなく低い。サポーターとしては、ッ単純にアンフィールドでプレーするアラバを観たい気持ちでいっぱいだが、温かく新たなチャンレンジを見守りたい。
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ダリル・ヤンマート(無所属)
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かつてワトフォードやニューカッスルでプレミアリーグ経験のある元オランダ代表DFダリル・ヤンマート。現時点で獲得していないということは、ナサニエル・フィリップスやリース・ウィリアムズで乗り切る決断がなされたことを意味し、獲得の可能性がほぼゼロだが紹介だけしておこう。
メインポジションは右サイドバックであるが、センターバックもこなせる器用なDF。プレミアリーグの経験は他の候補者と比較しても圧倒的で、大きなメリットとなる。トレント・アレクサンダー=アーノルドも筋肉系の負傷を抱え、ネコ・ウィリアムズのパフォーマンスも改善が見られない現状を鑑みると、ライトバック扱いでの補強も興味深い。
ファイト溢れるプレースタイルで、激しさを前面に押し出した守備が持ち味。技術的にすこぶる優れている印象はないが、短期的なオプションとしての獲得であれば合理的。年齢を重ね、どこまでアップダウンを繰り返せるか疑問符が残るものの、積極的な攻撃参加もリバプールのサッカーには合っている。
仮に…ジョエル・マティプやファビーニョ、さらにはフィリップスやリース・ウィリアムズに負傷者が出れば、獲得も現実味が湧き出す。
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エセキエル・ガライ(無所属)
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無所属…つまり移籍金がかからず、いますぐにでも獲得できる選手である元アルゼンチン代表DFエセキエル・ガライも頻繁に誌面を賑わせている。バレンシアを退団して以来、フリー状態が続く。絶頂期はレアル・マドリッドに所属するなど、センターバックとしても指折りの実力を有していた。
現役続行に向けた複数のオファーを固辞していると伝えられていることから、次の移籍先には相当なこだわりも持っている。34歳とピークを超え、肉体的な衰えが顕著な上、元々スピードのあるタイプではなく、プレミアリーグの速さには苦労しそうだ。
さらには、ラ・リーガを中心に活躍していたため、プレミアリーグでの経験がないのは、ヤンマートよりも評価が下がってしまう要因。言語的にも英語が話せるか不透明で、短期的なオプションとしては素早い順応には課題がありそうに感じてしまう。
しかし、現時点で交渉に動いているという報道もなく、具体的なオファーが提示されたような様子はない。そのため、フィリップスとリース・ウィリアムズで十分と判断がなされたと容易に想像できる。サイドバックなどは担当できないため、補強するにしてもダリル・ヤンマートが優先になりそうだ。
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細かいニュースを拾っていけば、この7選手以外には取り上げられている。そして、ニュースだけを頼りにすると、ペール・スフールスが一歩リードしているようだが、蓋を開けないと真実は漏れ伝わってこない。
2021年1月に選手を補強するしないに関わらず、ユルゲン・クロップ監督やマイケル・エドワーズの手腕には刮目しなければいけない1ヶ月間になることだけは間違いない。